同志。(中学3年生の野球少年を持つ親父たちへ。)

連日、同じ中学3年生の野球少年を持つ親父仲間たちからメールを頂く・・・。
そうだね、もうちょっとだ・・・。
もうちょっとで僕らが息子たちと一緒に向き合って来た少年野球は終わる・・・。
短いようで長かった・・・。
それが本音・・・。
長いように思えてとても短かった・・・。
それも本音・・・。
頂いた同い年の息子を持つ親父たちからのメールは、ひとつひとつが同じで、ひとつひとつが異質で、
ひとつひとつに共感し、ひとつひとつに考えさせられる内容のものばかりだ・・・。
あらためて僕は感じているし、あらためて僕は考え続けているし、
同じ時を過ごした全ての人々に対して感謝をし続けていたいと思う・・・。
あらためて僕は、同い年の野球少年を持つ親父たちにメッセージ(なんて言い方は、失礼を承知の上で、)を贈らせて頂く・・・。


うれしかったのは、
みんな夢の中にね、生まれて初めて野球のユニホームを着たちっちゃな息子たちが遊びに来ているって事だ・・・。


そうだね、あの日の息子たちは、こぼれそうな笑顔で僕らに会いに来る・・・。
もし、それが小学校の1年生であったのならば、最長で9年足らずの日々だったのだけれど、
僕らを奮わせ続けてくれたのは、間違いなくあの笑顔だ・・・。


野球は楽しいんだ・・・。
野球は楽しいんだ・・・。


僕らはきっと、誰もがそれを伝えたかったんだ・・・。


中学3年生の野球少年を持つ親父・・・。
野球少年と共に過ごす日々が残り僅かになる・・・。
カウントダウン・・・。


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ある野球少年たちの先輩の話をしよう・・・。
彼は、現在、高校3年生だ・・・。


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この春の甲子園の決勝戦は記憶に新しいだろう・・・。
そう、埼玉県のS学園・・・。
勝戦の後半、再びマウンドに上がったエース、Oくん・・・。


それは、決勝戦の中でね、最も盛り上がった場面だった・・・。


スタンドでマウンド上の息子を見守りながら、Oくんのお母さんは、膝の上に抱いたOくんのお父さんの遺影を撫でながら祈り続けていたのだそうだ・・・。


「お父さん・・・、お願い、あの子を助けてあげて・・・。」


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その時、マウンドに野球の風が吹いた・・・。
野球の風の中に、Oくんは、お父さんの声を聞く・・・。


「な、野球って楽しいだろ?」


Oくんはね、ピンチのマウンドの上で笑った・・・。


白い歯を見せて、とても素晴らしい笑顔で笑ったんだ・・・。


「ああ、父さん、野球って楽しいよ・・・。」


Oくんがマウンドの上で見せた素晴らしい笑顔って、
きっとね、
生まれて初めてユニホームを着た時の笑顔と同じだったのではないだろうか?


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「野球って楽しいだろ?」
Oくんのお父さんは、ずっとずっと、Oくんが小さかった頃から言い続けていたのだそうだ・・・。


Oくんのお父さんの心に想いを馳せてみよう・・・。
それは、現在の僕ら、野球少年を持つ全ての親父たちと同一のものではないだろうか?


甲子園だけじゃない・・・。
野球だけなんかじゃない・・・。
人生のあらゆる場面に於いて、どんなピンチの場面でも笑える強さ・・・。
そんな屈強な心を持った男に成長してほしいんだ・・・。


それが僕ら親父たちの願いなのだ・・・。


「野球って楽しいだろ?」


不器用な僕ら親父たちは、
その一言しか語れなかったけれど・・・。


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それで充分・・・。
それだけで充分・・・。


小さな息子たちを見守り続けた日々がある。
その日々を財産だと僕は思う・・・。


少年野球・・・。


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お父さんが亡くなった時、Oくんはお父さんの棺の中に、
自分が小さかった頃の野球の思い出の品々を入れたのだそうだ・・・。


彼のお父さんはきっと、
どんなにか嬉しかった事だろう・・・。


今、中学3年生の野球少年を持つ親父の僕らなら、
きっと誰もが理解出来るのではないか?


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残り僅かな息子たちの少年野球・・・。


今、


今しか見られない中学3年生の笑顔を焼き付けよう・・・。


涙も汗も、


僕らの胸の中に焼き付けよう・・・。