間に合うかもしれない。 よしだ多苦労。

夏の名残りを感じる一歩手前の出来事だと言えよう。


「お客さん・・・、だいぶ頭皮も日に焼けていますね・・・。
 充分にケアをした方がいいですよ・・・。」


とても親切な床屋のオジサンだった。
床屋のオジサンに乾杯!ルネッサ〜ンス!


しかし、これまでの日々の炎天下、僕はそれほど外にいたワケじゃない。
そして外にいる時はさ、しっかりと野球帽をかぶっていた・・・。
だのにプロの目にはね、すべてお見通しなんだな・・・。


頭皮の日焼け・・・。
毛に良かろうハズは無い・・・。


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一番気になる瞬間は風呂上り。
脱衣所で濡れている髪をゴシゴシ拭きながら、
洗面台の鏡に映りし、蛍光灯に照らされた頭のてっぺんを見る時。


ちょっぴり物悲しい気持ちになる昨今・・・。


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「毛穴なんです・・・。
 すべては毛穴なんです・・・。
 ちなみに、昆布は迷信です。」


親切な床屋のオジサンが言う、
毛の太さイコール毛穴の直径であると・・・。


「オススメのシャンプーがあります。
 どこのスーパーでも売っていますよ。」


親切な床屋のオジサンは続ける、
毛穴に詰まった皮脂をひっしと取り除くシャンプーが存在する、と・・・。
必死(皮っ脂)なオジサンの訴えがヒシヒシと僕の胸を揺さぶる・・・。


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僕は思う。


虎穴に入らずんば虎子を得ず・・・。


ならば人々よ、


毛穴に入らずんば毛を得ず・・・。


と・・・。


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床屋さんからの帰り道、
僕は、そのシャンプーを入手した。


え?銘柄を教えろって?


ふっ、・・・どうしようかな?


人に言えぬ秘密のひとつやふたつ、
僕だって持っていたい・・・。


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ちょっと、そこのアナタ、
頭皮が日に焼けていませんか?


同志よ、
否、同士じゃないか!アナタ!
薄くなりつつある者同士じゃないか!


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現実から逃避(頭皮)せず、
運命に抗いながら力強く生きていこう!


まだ間に合う!


きっと、
たぶん、
もしかしたら・・・。