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「野球のベルトがきつくなった。」
お?そうかそうかハヤトよ、父ちゃんもな、ベルトはどんどんきつくなってる。
同じだね・・・。
「父さんとは違う・・・。
オレは鍛えて大きくなってる。」
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まだ14歳・・・。
もっともっと大きくなるんだろうな・・・。
日本選手権終了時に比べ、実に5センチ・・・。
5センチの所に僕は穴を開けた・・・。
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「たまらなくイイでしょ?」
「これからがすごくイイのよ、高校から大学にかけて、ね。」
「ギリシャ彫刻みたいでしょ?・・・裸くん、だと・・・。」
「我が息子ながら私、惚れ惚れしちゃってたもん・・・。」
ナースなカミさんが勤務する病棟には、元・野球少年を持つ母が多い・・・。
夜勤の晩の詰所の会話で、おばさ・・・じゃなかった、先輩ナースたちからね、
いろんな話をカミさんは聞いているみたいだ・・・。
埼玉U学園、Yくんの母、(このヒトは甲子園でスゴイ形相で応援している姿がNHKで流れた。)とか、
埼玉Sから現在は六大学で活躍しているHくん母とか、
おばさ・・・じゃなかった(何度も失礼。)、先輩ナースの言葉がありがたいアドバイスになっている。
夜勤・・・。
カミさんは辛いだろうと思う・・・。
でもね、とりあえずすごく頼りないんだけれど、さ、僕が家にいる・・・。
見ているよ、僕は、子供たちの様子を・・・。
ハヤトも娘もきちんと過ごしている・・・。
大丈夫だよ、野球少年を持つ母よ・・・。
君の先輩のナースたちの息子たちだってさ、みんなみんな真っ直ぐな少年やら青年ばかりでしょ?
大丈夫だよ・・・。
そして、ありがとう・・・。
今夜、僕はハヤトのベルトに穴を開けたよ・・・。
こんなにも逞しく大きくなったよ・・・。
君ががんばってくれているからだと僕は思うよ・・・。
カミさん・・・。
野球少年を持つ母・・・。
そんでもってナース・・・。
・・・看護婦さん・・・。
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昔、まだ小さかった子供たちを連れて、
夜勤に向かうカミさんを病院まで送った事がある・・・。
看護婦さんたちの出入り口の傍に、
残念ながら亡くなってしまった患者さんの御遺体安置所がある・・・。
娘:「ママ、恐くないの?」
ハヤト(小):「ママ、恐クナイノ?」
カミさん:「ぜんぜん平気よ・・・。
恐くなんてないのよ・・・。
亡くなってしまった患者さんだってね、みんな一生懸命生きた人ばかりなのよ。
ママはいつも、ご苦労様でした。って気持ちでいるの・・・。
それから、ね、看護婦さんの服を着ると不思議なんだ・・・、
何にも恐くなくなっちゃうの・・・。」
その時の子供たちの様子を僕は憶えている・・・。
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ハヤト。
朝と夜、走る・・・。
毎日6キロを走っている・・・。
バットを振る・・・。
バットは宝物だもんな・・・。
ベルトに僕は穴を開けた・・・。
父さんは、とてもうれしい気持ちでね、
君のベルトに穴を開けたよ・・・。
君は、大きくなっている・・・。
弱っている人や、困っている人や、
泣いている人や、悲しんでいる人たちの側に立てよ、ハヤトよ・・・。
君は、母さんの息子なんだもの・・・。
そんな野球選手に必ずなれるよ・・・。
随分と君は、大きな野球少年になった・・・。
ハヤト。
母さんは夜勤・・・。
君の母さんは、ね、
たくさんの人を助ける仕事をしてる・・・。
いいか?
君はそれを誇れ・・・。
君は、君の母さんを誇っていい・・・。
寂しいか?
寂しいよな・・・。
夜、家にさ、お母さんがいないんだもの・・・。
その辛さを知る君は、きっと強い少年なのだろうな・・・。
君は黙々とバットを振る・・・。
君は、随分と強い男になった・・・。
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君は、随分と強い男になった・・・。
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ありがとう・・・。
5センチ君は、強くなった・・・。
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