ちりんちりん。
ハヤトの自転車が壊れた・・・。
・・・寿命だった・・・。
よくぞここまでがんばってくれたものだと僕は思う・・・。
自転車よ、ありがとう・・・。
自転車よ、ご苦労さま・・・。
ちりん・・・ちりん・・・。
ちりりん・・・。
ベルの音がする・・・。
ハヤトが自転車を片付ける度にね、いつも僕の仕事部屋まで聞こえてきた音・・・。
ちりん・・・ちりん・・・。
ちりりん・・・。
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この自転車を買ったのは、ポニー入団の少し前だった・・・。
ピカピカ光っていた銀色の自転車・・・。
今、あちこち錆びた車体を見ると、あらためて時間は確かに過ぎていたのだと感じる・・・。
我が家からね、清瀬第2グラウンドまでの距離は、約7キロメートル(片道)。
その往復だからさ、え〜っと7×2=14キロメートルか・・・。
野球に出掛けるだけじゃない。
いろんな所に出掛ける時の、これはハヤトの足だった・・・。
壊れた・・・。
壊れちゃったんだけれど、これだけ走れば致し方あるまい・・・。
やっぱり寿命なんだろうな・・・。
あちこち錆びた自転車・・・。
ありがとう。
ご苦労さま。
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出掛けているハヤトから僕に電話が来た。
「もしもし、あ!父さん?オレオレ。」
ん?何だ?ハヤトよ、オレオレ詐欺か?
言っとくがな、父ちゃんは今、金の相談には乗れんぞ・・・。
むしろ逆に、相談に乗ってほしいって頼むタイプの男だぞ、君の父ちゃんは・・・。
しっかりとそれを憶えておけ!
「違うよ!・・・迎えに来てほしいんだけれど・・・、駅まで・・・。」
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う〜む、
自転車が無いと不便だな。