書初め。

中学3年生、
その冬休みの一日・・・。


書初め・・・。


ハヤトは正座をして墨を摺る。


シャッ・シャッ・シャッ・シャッ・・・。


静かな部屋が心地よい緊張感で満たされる・・・。


シャッ・シャッ・シャッ・シャッ・・・。


半紙を挟み、ハヤトと正対する位置に僕も正座をする・・・。


ハヤトよ、いいか?
父ちゃんを師と仰げ・・・。
教えを請うてみろ!
先生と呼べっ!


「・・・何で?」


ハヤトが顔を上げて僕に言った途端、
墨が硯の縁にあたり、
墨の雫が跳ねてハヤトの白いシャツに着いた・・・。
ポチポチっと、かなり目立っちゃう部分に・・・。


ああっ、ハヤトよ、
それってちゃんと「汚してもOK」のシャツか?


「ああ〜っ、汚しちゃいけないシャツだったぁ〜!
 どうしよう!母さんに怒られる!」


う〜む、正直に謝るべきだろうな・・・。
かつてアメリカ大統領だったワシントンさんが幼少の頃、
父親が大切にしていた桜の木を切ってしまった時・・・、


「そんな事を言ってる場合ではないでしょ!」


うろたえるな!うろたえるな!ハヤトよ・・・。
ちなみに、父ちゃんのシャツは「汚れてもOK」さ・・・。


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「よくよく考えたらさ、原因は父さんじゃないか!
 第一、何で父さんがオレの部屋にいるんだ?」


それはな、
面白そうだから、だ。