漕げよマイケルじゃなくペダル。

今日、秋水園グラウンドの脇道を車で通り抜けた僕は、
自転車に乗り一列になって移動する学童野球チームの子供たちを見掛けた・・・。
高学年だろうな。
6年生なんじゃないだろうか・・・。
彼らはユニホーム姿でバットを背負い、規律よく隊列を組んで走っていた・・・。


好天が続いているゴールデンウイーク。
爽やかな初夏の風の中を、野球少年たちは走る。
自転車に乗って。
元気いっぱいにペダルを漕いで走る。
カキーン!なシアワセの音に向かって、
野球少年たちはペダルを漕ぐ・・・。


そんな彼らのイイ笑顔を見ながら僕は考えたんだよ。
自転車ってイイよねって、さ。


自転車ってさ、もしかしたら世界で一番シアワセな乗り物なのかもしれないね・・・。


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昨日の、あのちいさな男の子は、
一人で自転車に乗れるようになってきっと、
うれしくてうれしくてたまらない気持ちで今頃、
もしかしたら遊歩道を走っているかもしれないな・・・。


高学年の野球少年たちが自転車を漕ぐ姿に僕は、
昨日のちいさな男の子の姿を重ね合わせていた・・・。


ものすご〜く陳腐な言い方になってしまうのだけれど、
自転車ってね、人力飛行機に似てると思う・・・。
心の中にある高い高い所へ飛び立つ飛行機だ・・・。


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どうだったんだっけ?と、
僕は、僕が生まれて初めて補助輪無しの自転車に乗れた日の事を思い出していた・・・。


それは、僕が小学校へ上がる前の年だった。
補助輪を取り外した自転車に僕は乗っていた。
僕の自転車の荷台を両手で支えてくれていたのは、僕の親父だった・・・。


ふっと足が軽くなる瞬間があって、
僕が漕ぐ自転車はスピードを見る間に増したんだ。
その時の流れる景色や、頬を撫でた風の感触が今、
鮮やかに僕の中で蘇った・・・。


ふっと足が軽くなった瞬間にきっと、
僕の親父は荷台からそっと手を離してくれたんだと思う。


振り返ると、随分と遠くに親父の姿が見えたのだった・・・。


思えば、ね、
あの日、ほんの少しだけ僕は強くなれたのかもしれない・・・。
補助輪無しの自転車を懸命に漕ぎながら・・・。


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そうそう、
息子の高校の野球部での様子。
いよいよ遠征が開始されたようだ・・・。
たくさんたくさん学んでほしいと願う・・・。


詳しい事は、あえて聞かないようにしている今の僕なのだけれど、
毎晩の練習に付き合いながら表情を見て推し量る・・・。


大切で大好きな野球・・・。
とってもシアワセそうな顔をしている・・・。
だからきっと大丈夫だろうと思う・・・。


僕は、そう、
とっくの昔に、ね、
息子の自転車の荷台を支えていた手を離したのだから・・・。


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野球では、さ、
遥か遥か遠くまで走って行ってしまった息子だ・・・。


でも、ね、
いつの日か必ず僕の方を振り返ってくれる時が来るだろうと思う・・・。


その時の僕は、
息子から見れば随分と後ろにいて、
ちいさくちいさく見えるだろうと思う・・・。


けれど、
ちいさくて遠くに見えてしまうような場所にいても僕は、
しっかりと息子の方を向いていてやろうと思う・・・。


昔、
僕の親父が僕にしてくれたのと同じように、な・・・。


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自転車で街を走る野球少年たちの姿を見る度に僕は祈ろう・・・。


みんなみんながんばれ!
どの子もみんな負けるなよ!


元気いっぱいに自転車のペダルを漕ぎ続けておくれよ!と・・・。


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PS、金魚が生まれたよ!