タッチアウト!
タッチパネルが反応しない・・・。
おいっ、反応しないぞ!
ギュギュッっとな、親指で押してみよう・・・。
強く画面を押してみよう・・・。
静かな昼下がり。
銀行のATMの前で。
指先に力を込めている僕。
タッチパネルが反応しない・・・。
おいっ、反応しないぞ!
ギュギュッとな、親指で押してみよう・・・。
もっともっと強く画面を押してみよう・・・。
指圧の心、親心っと・・・。
ダメだ・・・。
やっぱり反応しないぞ・・・。
壊れてるんじゃないか?このATM・・・。
不便じゃね?タッチパネルってさ・・・。
ダメだ。
「確認」も「取消」も反応しない・・・。
無視してる?むっしっし・・・。
こうなったらな、もっともっと強く、親指の腹に力を入れて押してやれ。
ギュギュ〜ッ、ギュギュ〜ッ、拇印を押すような気分だホイ・・・。
まさしくな、ヒゲと拇印・・・、なんちゃってな・・・。
♪拇印は〜 お父ちゃんのものと違うんや〜で〜
赤ちゃんが飲むために〜 あるのんや〜で〜♪
ギュッ、ギュッ、ギュギュギュ〜ッ・・・。
たぶん、ものすごい形相の僕が防犯カメラに記録されているんだろうな・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「確認」も出来ず、「取消」すら出来ず、
金額はおろか、暗証番号すら入力出来ぬまま、為す手段無き僕に、
「もう一度はじめからやりなおしてください。」と、
無情にもATMは言う・・・。
もうやだ・・・。
隣のATMに移ろうぞ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だが、隣のATMも同じ・・・。
まったく反応せず・・・。
ふと隣を見て驚く・・・。
さっきまで僕が悪戦苦闘していたATMの前で、
おばあさんが簡単に操作しているではないか・・・。
しかも、しかも人差し指で、だ。
軽くタッチするだけでな、ピピッ、ピピッとサクサク動作している模様・・・。
う〜む、ATMのヤツめ!
けしからん・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ATMの脇に付いているボタン(良かった、タッチパネルじゃないぞ、普通のボタンだ。)を押し、
銀行の親切な係りの人に来て頂く・・・。
摩訶不思議。
その人が押すとタッチパネルは反応する。
僕が押すとタッチパネルは反応しない・・・。
ものすご〜く、
ものすご〜く、
なんだかイヤな感じ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日、
車のナビのタッチパネルも反応しなかった・・・。
こんな事ってあるのかい?
僕は、自分の指先をじっと見つめた・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕、何か悪い事した?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タッチパネルの画面を、
親指で突き破りたい・・・。