「言葉」を語ろう。
にゃんと・・・。
娘(高3)がお気に入りにしてる僕が小さな頃のアルバムの中の一枚・・・。
小さな頃、「言葉」をあまり語らなかった僕が遊んでいる写真だ・・・。
な、寡黙だろ?
しゃべる事なくシャベルでひたすら遊ぶ・・・。
僕は、ダンプカーが大好きだった・・・。
将来の夢は、ね、ダンプカーの運転手さんになる事だった・・・。
寡黙に生きる男らしい人生を歩みたいと考えていたのさ・・・。
この頃の記憶がさ、結構あるんだよ・・・。
信じてもらえるだろうか・・・。
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その頃のある日、
僕は、オフクロに手を引かれて歩いていた・・・。
生まれて、ようやく首が座ったばかりの弟を背負い、
そして僕の手を引いて、オフクロは早足で歩いていた・・・。
僕の靴が脱げた・・・。
たぶん、小石か何かに引っ掛かって脱げたんだと思う・・・。
僕はそれを、オフクロに伝えようと思った・・・。
伝えようと思ったんだけれど、
それをオフクロに伝えられなかったんだ・・・。
何しろ僕は、当時、
単語しか話せなかったんだ・・・。
靴が脱げちゃったよう・・・。
それすら手をつなぎ歩くオフクロに伝えられなかったのだ・・・。
手を引かれ歩きながらも僕は、3つの単語が頭の中に浮かんだ・・・。
1・「オカアサン」
2・「ヌゲチャッタ」
3・「クツ」
どうしたらこの3つの単語で「言葉」が作れるだろう?
手を引かれ歩きながら僕は、それを随分と考えていたのだけれど、出来ず、
とりあえず1の単語を選択した・・・。
オフクロの手を逆に強く引っぱり、そして顔を見て言った・・・。
「オカアサン・・・。」
足早に歩いていたオフクロだったのだけれど立ち止まり、
その時に、ね、しっかりと僕の顔を見てくれたのがうれしかったのを覚えている・・・。
「な〜に?」
オフクロは優しく聞いてくれたのだけれど、次の単語が僕は出なかったんだよ・・・。
「な〜に?・・・、
・・・、じゃ、行くわよ・・・。」
僕は、幼児なりに焦った・・・。
「ヌゲチャッタ・オカアサン・クツ」か?
「クツ・ヌゲチャッタ・オカアサン」か?
「オカアサン・ヌゲチャッタ・クツ」だろうか?
否、
それだとオフクロが裸足だって事になるんじゃね〜か?
とか、ね、
幼児だった僕は、それなりに考えたんだぜ・・・。
でも、結局、「オカアサン」しか言えなかったんだよ・・・。
「な〜に?」って、オフクロは言った・・・。
その時の笑顔の優しかった事、
それは忘れられないだろうと僕は、今でも、思う・・・。
母:「な〜に?」
僕(幼):「オカアサン・・・、」
母(無情):「な〜に?・・・、
・・・何でもないなら行くわよ・・・。」
そう言ってオフクロは再び歩きだした・・・。
僕の手を引いて・・・。
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僕は振り返りつつ見た・・・。
どんどん遠くなるの・・・。
どんどん小さくなるの・・・。
ぼくのくつ・・・。
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左足のまで脱げちゃった・・・。
ぼくのくつ・・・。
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オフクロは僕が裸足なのを見る・・・。
かなりビックリしている・・・。
(あたりまえだ・・・。)
そして僕に言う・・・。
「どうして裸足なのかな?」
「靴、どうしちゃったのかな?
怒らないから教えてくれるかな?」
その時僕は、本気で「言葉」を語ろうと思った・・・。
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今でも僕は、時々思い出すんだよ・・・。
3つの単語・・・。
どんな順番でつなげれば「言葉」になっただろう・・・。
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「クツ・ヌゲチャッタ・オカアサン」
「オカアサン・ヌゲチャッタ・クツ」
「ヌゲチャッタ・オカアサン・クツ」
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言葉・・・。