オッケーの心。
覚えているだろうか?
まだ覚えているだろうか?
40過ぎて、親父になった僕らだけれど、
同世代の親父の仲間たちよ、
あなたは今でも覚えているだろうか?
え?何の話だって?
別にね、難しい話じゃないんだ・・・。
生まれて初めて「サカアガリ」が出来た日の事。
その時に見えた流れるような光景を、さ、
今でも覚えているだろうか?
あまり力む事なく鉄棒を握り、
かなりの勇気を振り絞って僕らは地面を蹴った。
すうっと心地よい風が頬を撫でて、僕らは誰もが見たはずだ。
校庭の茶色い土の色と、
白い雲が浮かんだ青い空の色が、
一瞬で巡る不思議で爽快な景色を・・・。
「わあっ!」と歓声をあげてくれたトモダチの笑顔と、
顔をくしゃくしゃにして拍手をしてくれた先生の姿・・・。
僕は今でもはっきりと覚えているんだよ・・・。
みんなが歓声をあげてくれるぐらい僕は、「サカアガリ」が出来るのが遅かったのだけれど、
それだけに本当に、ね、うれしくてたまらなかったんだ・・・。
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「サカアガリ」で見えた景色・・・。
生まれて初めて出来た「サカアガリ」で見えた景色・・・。
それはきっと僕らの、勇気の原風景なのかもしれない・・・。
覚えているだろうか?
忘れてしまったのなら、ね、
どうか思い出してほしい・・・。
今、40代になってしまった僕らなのだけれど、
僕らは、誰もが、勇気を持っていた・・・。
勇気を持った子供たちだったのだ・・・。
覚えていてほしい。
思い出してほしい。
忘れないでいてほしい。
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この春、
僕の同級生のMくんは、会社が募った早期退職に応じたのだそうだ・・・。
「今までオレは、何のために働いてきたんだろう・・・。
オレはこれから、何をすればいいんだろう・・・。
カミさんや、これからまだまだ手が掛かる子供たちの事を思うと切ない・・・。
不安でたまらないよ・・・。」
僕は、受話器の向こうから聞こえる声に胸を詰まらせながら、
何も出来ない僕の無力さを思った・・・。
「昼は近所に恥ずかしくて外出出来ない。」などとMくんは言う・・・。
何も恥ずかしい事なんてあるものかと僕は言った・・・。
いろんな人がいて、いろんな生き方がある・・・。
僕を見てみろ!
スーパーのチラシをチェックしたりしてるぞ!
惣菜コーナーやらレジやら、親切なオバちゃんと仲良くなったりしてるぞ!
鼻歌を唄いながらな、ベランダに出て洗濯物を取り込んだりしているぞ!
しかもビシッと乾いた洗濯物をたたむテクニックを会得してな、
カミさんからの評価が赤マル急上昇中だ!
「わっはっは・・・。」
ようやくMくんは笑い声を出してくれた・・・。
いいんだよ、いいんだよ・・・。
生きてるだけでOK!
そうそう、「怒髪天」ってバンド知ってる?
♪生きてるだけでオッケー!
ま、いろいろ〜あるけ〜ど〜
生きてるだけでオッケー!オッケー!♪
この歌のタイトルがイイんだ・・・。
ずばり、「全人類肯定歌」という・・・。
まさしく愉快・痛快だ・・・。
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「サカアガリ」が出来た日の事。
その時に見えた景色の事。
いつまでも覚えていようや・・・。
僕らは、誰もが、勇気を持った子供たちだった。
勇気を持った親父になれるはずだよ。
オッケー!
OK!