朝に夜に、よく見かける。
彼らのその姿は、ね、一目でそれと解る。
高校の制服、丸坊主の頭、大きな四角い野球のカバン。
自転車で走る彼らの姿は、ね、一目で野球部だと解る。


それってさ、すごい事だと僕は思うよ。
誰が見たって一目で野球部なんだよって解ってもらえる事がすごいよ。


東久留米の街を僕は車で走りながらいつも、
そんな彼らの姿を見るたびに嬉しくなるんだ・・・。


車ですれ違うだけだからね、
表情までは見えないのだけれど、
きっと近くで顔を見たらね、
君はたぶん、知ってるあの子だ・・・。


この街の中の、どこかの学童野球のチームにいて、
どこかで必ず僕と会った事がある子だ。


君は随分と大きく逞しくなり、
少年などと呼んだら失礼なほどに青年らしさを増し、
ペダルを漕ぐ君の革靴は、ピカピカと光っている。


四角い大きな野球部のカバンにね、
遠くからでは見えないのだけれど、
学校の名前が書かれているんだね・・・。
君は、君の母校を今、力の限り誇れ。


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君がどこの高校の野球部なのかは関係ない。
君が今、どんな活躍をしていようがいまいが関係ない。
僕には関係ない・・・。


でもね、ただうれしいんだ。
高校生になった今でも君が、さ、
野球と共にいる事がうれしいんだよ。


それだけなんだよ・・・。


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自転車で走る君。
高校の制服を着て坊主頭の君。
大きな四角い野球のカバンを持つ君。
革靴がピカピカと光っている君。
坂道を登る君。


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朝に夜に、よく見かける・・・。


気をつけておくれよ、
交通事故だけは嫌だぜ・・・。


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がんばれがんばれ!ってな、
あんまりがんばる事が嫌いなオジサンが言っても説得力に欠けるんだけど、
それでも僕は言う。


がんばれがんばれ!
君は今、素晴らしい人生を歩むための稽古をしているところ・・・。