寮生活の思い出。

先輩から自分がされた嫌な事を、今度は自分が後輩にしてはいけない。
そして、その逆もまた然り、である・・・。
ちょびっと解りづらい言い方で恐縮なのだけれど、
その逆もまた然り、とは、すなわち、こんな事でR。


後輩が誤って先輩にしてしまう事だってあるんだよ。
そんな事をされないような先輩にならなくっちゃいけないのでR。


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寮生活。
高校時代の寮生活。
振り返るとそれは、悪い事ばかりではなかった・・・。
「うわ〜ん、家に帰りたいよう!」って泣いていたのは、ね、
1年生の2学期までで、
それ以後は、だんだん楽しくなってきて、
3年生の2学期なんてむしろ、
「うわ〜ん、家に帰りたくないよう!」って叫ぶまでに成長しちゃったりする・・・。


だから現在泣いている高1寮生の君よ、がんばれ・・・。
オジサンが高校1年生の時の話をしよう・・・。
読んで元気を出してくれ・・・。


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ある日、1学年上のMさんに宅急便が届いた。
Mさんのお母さんが息子のために送った荷物だ。
それは、「カップ焼きそば」一箱分(30個入り)だった。


お母さんが書いた手紙が添えられていた・・・。
「みんなで食べてくださいね。」って・・・。


「みんなで食べてくださいね。」ってお母さんの手紙には書いてあったのに、
Mさんが僕らに「カップ焼きそば」を分け与えてくれる事は無かった。
親不孝な男だ。


僕のお母さんが僕に送ってくれた「日清・棒棒鶏」一箱分(袋ラーメン30個入り)は、
かなりの個数がMさんの胃袋に納まったのに、だ・・・。
まったくもって理不尽な話だ。


ある夜、Mさんが僕に、
「おい、カップ焼きそばを作って来い。」と言った。


寮の流し台の脇にあるコンロで僕はお湯を沸かし、
カップ焼きそば」のカップに注ぎ、そして3分待った・・・。
青春時代の貴重な時間の中の3分間を僕は、先輩のために費やして待った・・・。


3分が経ち、さて、お湯を捨てようとした時に悲劇が起きた。
なんと手がすべり、「カップ焼きそば」の麺とかやくが、
流し台の隅の三角コーナーの中に落っこちたのである・・・。


僕は慌て、アチチチチとなりながら、
麺を一掴みしてカップに戻した・・・。
三角コーナーの網に付着していたヌルヌルが若干綺麗になっている気がしたのだけれど、
それはたぶん気のせいだ(と考える事にした)。


匂いを嗅ぐと、ちょびっと生臭かったのだが、
ソースと青海苔を入れ、よ〜くかき混ぜると気にならなくなった・・・。


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「おう、サンキュ!」
Mさんは美味しそうに食べていた・・・。


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その夜、僕は夢を見た。
「ううっ、オナカが痛い・・・。」とMさんが呻く夢を・・・。


ああ、神様、ご麺なさい、じゃなかった、
御免なさい・・・。
どうか先輩を助けてください!と祈った・・・。


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翌日、Mさんは元気いっぱいにカキーン!だったのでホッとしたが、


もしかしたら流し台の悪い菌は潜伏期間なのかもしれないと僕は考え、
Mさんから目を離すまいと思った。


Mさんの身に異変が起きたら僕のせいなのだ。
その時には真っ先に駆けつけるのが人の道なのだ。


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だが、3日後も1週間後も、
Mさんは元気いっぱいだった・・・。
打球の飛距離も伸びたような気がした・・・。


僕は、ようやく胸を撫で下ろした。


Mさんを丈夫な身体に産んでくれたお母さんに感謝しながら・・・。


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Mさんはサンネンセイノナツ、神戸の甲子園に出場。
ただ無安打、初戦敗退。


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寮で先輩は恐かったけれど、
寮を一歩出れば頼もしかった。


それが寮生活だ。


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現在寮生1年生の君たちよ、


おっ、先輩の食器を洗っているのか・・・。
えらいぞ、えらいぞ・・・。


ええっ!無理やり洗わされているのかい?


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おっ、流し台の下にバケツがあるネ。
バケツの縁に灰色に変色してカピカピに乾いた雑巾が掛かっているアルネ。
なんで雑巾ってさ、みんな灰色なんだろ?謎だネ。
念のためついでにさ、トイレの掃除用具入れのトコロも見てごらん。
もしかしたらそこにも灰色になった雑巾があるかもしれないネ。


その雑巾で先輩の食器を拭いちゃ駄目アルヨ。
ぜ〜ったい駄目ヨ。


高校時代の僕だったらネ、
ついうっかり、間違えてそれで拭いちゃうかもネ。


キュッキュッ・・・。
念入りにネ、磨くように拭いちゃうかもネ。


茶店のマスターみたいにネ。