告別の朝。
〜成せば成る〜
これは、故人がかつて野球の教え子たちに贈った言葉である・・・。
〜成せば成る〜
その頃、自身を蝕む病気を知ったコーチが、
どんな想いで当時の清瀬ポニーの選手諸君に、その言葉を贈ったのだろうと考えると辛い。
だから今僕は、あらためてその言葉を現役の清瀬ポニーの選手である君に知ってほしいと願う・・・。
知って、そして深く考えてもらいたいんだよ・・・。
〜成せば成る〜
その言葉を、ね・・・。
〜成せば成る〜
それは、夢物語なのかもしれないけれど、
いつまでもずっと信じていてくれよな、
叶わない夢なんて無いんだって事を・・・。
〜成せば成る〜
この言葉の続きを全て僕は、ここに書いておこうと思う・・・。
清瀬ポニーの選手である君よ、
今、中学生の野球小僧である君よ、
現在の君の柔らかな心の中にメモをしておくれ・・・。
〜成せば成る、成さねば成らぬ何事も、
成らぬは人の成さぬなりけり〜
厳しかったけれど優しかった中村コーチの顔を思い浮かべながら、
いつまでも消えないペンで心の中にメモをしておくれ・・・。
これから先の君の人生。
何かがあった時にきっと、この言葉は君を導いてくれることだろう・・・。
叶わない夢なんて無いんだよ。
成そうとするかぎり・・・。
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今日、告別式に於いて・・・。
現役の選手たちが、まだ小さな掌に花を一つずつ持ち、
コーチの棺に花を供えた・・・。
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中学生の野球小僧たちだけで棺を運んだ・・・。
きっと、その重さは、ね、一人の人間が歩んだ人生の重さ・・・。
尊い人生と、その命の重さなんだよ・・・。
棺の中で眠る人は、君たちの全員を愛してくれていました・・・。
棺を持つ君のまだ小さなふたつの掌が、その重さをしっかりと受け止めてくれますように・・・。
重たいだろ?
人生って・・・。
重たいだろ?
人の命って、さ・・・。
いいかい?
だからこれからは、ね、君は、君自身の命をもっと大切に思ってくれ・・・。
そして、君の周りにある、あらゆる命を大切に思ってくれ・・・。
人生を大切に大切に生きる人になっておくれ・・・。
棺の中に眠るコーチが、最後に君たちに教えてくれたのが、
そうだよ、命の重さなのだ・・・。
まだ中学生の君よ、
まだ小さな君の掌よ、
しっかりと刻み付けるんだよ、
その重さを・・・。
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クラクションを鳴らし、
静かに霊柩車は走り出す・・・。
棺を運んだ少年たちは、
野球帽をとり、
深く頭を垂れた・・・。