部屋とVジャンと私。
昨年末、思いつく限りの方々に宛て、喪中の葉書は出していたのだけれど、
それでも多くの年賀状が届き、ひたすら恐縮の思いしきり・・・。
松が明けたらすぐに、寒中見舞いといった形になってしまうのだが、
あらためて御挨拶と共に、無礼をお詫びしたいと考えている・・・。
しかし、そんな中にあっても、年賀状でうかがい知る近況はうれしく、
年明け早々から僕は、暖かな気持ちや笑顔を頂いたような気がする・・・。
早くも八日。
今日で松が明ける。
今年が平安で、誰もがシアワセを感じられるような一年となる事を僕は、
あらためて祈る・・・。
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頂いた年賀状のひとつ、
2学年上の先輩であるIさんの近況に心が弾んだ・・・。
高校3年生の長男がこの春、
父親であるIさんの後輩として、同じKG大学で野球をする事になったそうだ・・・。
親子二代、同じ大学でカキーン!だ。
Iさんのうれしそうな顔が浮かぶ・・・。
今夜僕は、Iさんに宛てて、寒中見舞いを書くつもり。
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なにしろな、KG大時代のIさんは格好良かった。
そうそう、Iさんと僕の思い出話を一席・・・。
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高校3年生の夏休み、
早々にヒマ人になってしまった僕は、
実家に帰る事をせず、
大学や社会人で一人暮らしをしている懐かしい先輩たちの所を泊まり歩こうと決意した・・・。
つまり、「帰省」ではなく、「寄生」だ・・・。
上手い!
座布団一枚!ってね、心の中で考えた・・・。
今思えば、ものすご〜く迷惑な後輩だが、
あんまり物事を深く考えないのが青春の特権だ・・・。
マジソン・スクエア・ガーデンのバッグを一つ持ち僕は、
メモを一枚持ってIさんのアパートへ赴いた・・・。
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ピンポ〜ン!
ピンポ〜ン!
ガチャ、(ドアが開く音)
「げげっ!ど〜したんだっ!オマエ・・・。」
すいやせん、しばらくの間ご厄介になりやす・・・。
くんくんくん、おっ、女の人の匂いはしない部屋だぞい、
だったら泊めてくれるだろう・・・。
「あのな、新幹線代出してやるから家に帰れ!シッシッ!
オレは毎日な、練習でクタクタなんだ!とっとと帰れ!シッシッ!」
ひ、ひどい!
可愛い後輩を路頭に迷わせるつもりだ!ひどすぎる!
たぶん、可愛い子猫とかが捨てられていて、
そして冷たい雨に打たれて震えていても、
アンタは見て見ぬフリをする人間なんじゃないか?
あ〜ヤダ、
僕は悲しい・・・。
一晩だけでいいから泊めて下さい・・・。
「うるせえ!仕方ね〜な、長居はさせねーぞ!」
じゃ、よろしくお願いしや〜す・・・。
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そしてIさんと僕は、
1ヶ月間を一緒に暮らした・・・。
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炊事と洗濯と掃除を僕は、完璧にこなした。
Iさんの臭い練習着を洗い、汚いスパイクを磨いて干した。
栄養を考え、朝からきちんと米食にして、
お弁当の玉子焼きの上に、ケチャップでハートを書いた。
部屋も完璧に綺麗にしていた・・・。
追い炊き機能の無い風呂だったが、
Iさんの帰宅時間に合わせて湯船を満たした。
そして連日、三つ指をついて迎えた。
お帰りなさいまし・・・。
修行僧のような日々だったが、
僕には、人として大きく成長出来たと思える1ヶ月だった・・・。
2学期の始まりを前に、
そして部屋を出て行く僕に、
「出て行かないでくれ!」ってIさんに言わしめるほど成長出来た1ヶ月だった・・・。
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その後、
KG大に於けるIさんの活躍は目覚しかった・・・。
それもこれも、ね、
大学2年の一番つらい時期、
僕のようなラッキー小僧を部屋に招いていたからだと思う・・・。
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KG大学!
誇り高きその野球部に、
Iジュニアの青春の輝きあれ!
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おっとっと、
それではこれから寒中見舞いを書かなくっちゃ!