あっちこっちでサクラ咲け!
夜、お隣さんのフミくんが素振りをしていた。
フミくんは僕の娘と同い年、現在高校3年生。
彼も今、受験勉強の真っ最中だ。
昨年の夏を全力で駆け抜けた高校球児。
きっと、野球で学んだ強い心を持って、
受験でも本物の勝利を掴むんだろうな。
頼もしいなぁ・・・。
すっかりと青年らしい顔つきになっているんだ。
ブンッ、ブンッ!夜の闇を切り裂くバットの音。
フミくんの素振りの音。
「勉強ばかりだと疲れてしまうので、気分転換に素振りをしているだけです。」な〜んて、ね、
彼は僕に言っていたのだけれど、
ブンッ、ブンッ!って音を聞けばさ、
フミくんの心の一途さは伝わってくる・・・。
がんばれ、がんばれ、フミくん・・・。
夢があるなら一歩ずつ。
君のサクラが咲いたと聞く時にもきっと、
僕は泣くだろうな。
隣のオジサンってのは、な、
そんなものだ。
わっはっは!
カキーン!だ。
・・・・・・・・・・・・・
あっちこっちでサクラ咲け!
夢を持った若者たちと同じ数のサクラ咲け!
みんなみんながんばれ!
え?僕?
あのね、四十路のオジサンには、ね、
ユメもチボーも無いんだよ。
だから君たちが眩しい。