浮世床屋

月曜日の午前、
思いっきりの平日の朝、
僕ら夫婦は買い物に出掛ける・・・。


東村山にある、大きな大きなショッピングセンターである・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「床屋さんに行きなさい。」って、ね、カミさんは僕に言った・・・。
このショッピングセンターには、ね、
なんだか託児所みたいな感じの床屋さんが併設されているんだよ。
月曜日なのだけれどにゃん、床屋さんは営業している・・・。


「ママは買い物をしたらすぐに迎えに来るから待っててね・・・。」
若いお母さんがチビっ子を預けておるぞい・・・。


「いい子にちててね〜。」ってカミさんは言って僕を床屋さんに預けた・・・。


まったくな〜、昨日のワニのチョコレートだって今日の態度だって何だ・・・。
僕は思うのだけれど文句は言わない事に決めているから我が家は安泰・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


床屋さんだよ、床屋さん・・・。
チョキチョキチョキチョキ床屋さん・・・。


待合室みたいなスペースには、
僕と、まだ赤ちゃんみたいなチビっ子が3人・・・。


1.チビっ子のくせに妙にコザッパリしたヤツ。


2.鼻水が止めどなく流れ続けているヤツ。


3.妙にオムツが膨らんで垂れ下がっているヤツ。


そうそう、コイツ、さっき相当イキんだ表情をしていたっけな〜・・・。
「う〜ん、う〜ん」って唸っていたもんな〜・・・。
たぶん、オムツの中はスゴイ事になっちゃっているんじゃないか?


オムツが垂れ下がっていて、ミツバチみたいに可愛いんだけれど、
いいかい?絶対に座っちゃダメだよ・・・。


おおっ、リュックを背負ってるじゃん、
ちょっとオジサンに見せてみな。
替えのオムツが入っていたら取り替えてやっから・・・。
どれどれ・・・。


僕がミツバチっ子のリュックから替えのオムツを出していると、


コザッパリっ子が近くまで来て唄い始めた・・・。


「♪とぅいんくるとぅいんくるり〜るった〜♪」って・・・。


おおっ、オマエ、唄が上手だな〜・・・。
いつかオジサンがバンドを組んだらオマエはボーカルな・・・。


すると、止めどない鼻水っ子が絵本を持って近付いて来た・・・。


「読ンデ・・・。」って・・・。


おおっ、ぐりとぐらだな・・・。
ちょっと待ってろな・・・。
読んでやっから・・・。


オジサンにはな、小倉さんという先輩がいて、
ニックネームがグラだった・・・。


「読ンデ・・・。」


だからちょっと待ってろって・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カミさんよ、早くお迎えに来てほしい・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


すごくすご〜く疲れた・・・。


でもな、チビっ子って面白いな・・・。
面白くて可愛いな・・・。


東村山のチビっ子たち・・・。


いつか野球少年になるといいな・・・。


小学校に上がったらな、野球チームに入っておくれ・・・。


ドリームか?青葉か?
富士見町スワローズか?
コスモスライダースか?


野球少年になっておくれ・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


床屋って疲れる・・・。