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故・中村コーチの双眼鏡を携え僕は、埼玉県にある市立K高校野球部グラウンドへ行く・・・。
カーナビの履歴にずらり、この一年間で行ったさまざまな高校のグラウンドが並ぶ。
カキーン!の場所は、ね、
どこも等しい聖地。
とてもとても尊いところ。
高校球児がいるところ、
そこは既に甲子園。
僕のカーナビの画面には、いくつもの甲子園が並ぶ。
シアワセだ・・・。
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息子たちが出る一つ前の試合で、一年生のSくんが頭部に死球を受けた・・・。
幸いヘルメットに当たった球は角度がつく事なく後方に流れ、Sくんもすぐに笑顔を取り戻したのだけれど、父母席の僕らは皆、本当に肝を冷やした。
二年生の父母会の仲間、Yくん母が、Sくんを病院へ連れて行くと言った・・・。
そう、Yさん宅では、ね、
ご主人が監督を務める学童チーム出身の球児が、この春、遠く離れた岡山で亡くなるといった悲しい出来事があり、球児の命を想う心は、一際強い・・・。
「何事も無かったら一番なんだもの、親御さんの事を考えたらどうしても病院へ連れて行きたい。」
そして僕がYくん母とSくんを乗せ、Sくんの家の近くの病院へ行く事になった・・・。
Yくん母の気持ちに胸うたれた・・・。
そうだろ?
子供を送り出した親御さんは、ね、僕らのカキーン!の仲間なのだ。
送り出した子供が出掛けた先で何かがあったら、頼るのはその場にいる親の仲間なのだ。
もし、岡山でもな、
その場にいた大人の誰かが深い思考で行動をしてくれていたのなら、
その球児は命を落とさずに済んだかもしれないのだ・・・。
Yくん母の強い意志の行動から学ばせてもらった僕だ。
球児よ、
高校球児たちよ、
何かがあったらな、
遠慮なく近くにいる大人を信じて頼ってくれ・・・。
大丈夫だよ、約束する。
僕らが君を守ってやる。
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僕の車の中、
目を閉じて静かに眠るSくんの顔が可愛いい。
君は、どんな野球少年だったんだろう?
一生懸命な子供だったんだろうね。
「僕は、立川ポニーでした。」
そう聞いて何かの縁を感じた。
わっはっは!Sくんよ、
実は、僕がハヤトの親父です。
オッケーオッケー仲良くしてネ!
頭部の検査も異常無し。
僕らは胸を撫で下ろした。
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少年よ、
野球を学ぶ少年たちよ、
約束してくれ。
絶対に、な、
お母さんやお父さんより先に逝かないでくれ。
自分の命、仲間の命、
対戦相手の命、
それを大切に想ってくれ。
きっと、カキーン!は、ね、
それから、だ。
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Yくん母の心に感謝。
大切な野球の仲間。
ああっ!
中村コーチを忘れちゃった!
あのう、誰か、
その双眼鏡を持って帰って来てください。