息子の高校の野球部グラウンドを見守る大きな木は、ソメイヨシノである・・・。
来る春毎に花をたたえ、数多の球児たちの笑顔や涙を知る、
それはそれは枝ぶり見事なソメイヨシノである・・・。


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初秋にソメイヨシノの話題ってのも何だが、な、
僕には結構思い出がある・・・。


小学校時代僕は、罰当たりにもソメイヨシノの幹を蹴った・・・。
すると、ポトリと毛虫が落ちてきて、Tシャツの首の部分から背中に入ってしまい、刺されて大変な思いをした・・・。


毛虫・・・。
アメリカシロヒトリの幼虫・・・。
幼虫に、要注意!なんちゃって・・・。


春に綺麗な花を見るためには、な、
充分なる手入れが必要・・・。


息子の高校の野球部グラウンドで僕ら父母は、
そのソメイヨシノの木の下にイスを置いて球児たちを見るのだけれど、
時々僕は毛虫が心配になって枝を下から見上げたりもする・・・。
だが、本当に良く手入れされていて、毛虫はおろか葉に穴すらないので安心・・・。


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この先10年、100年、
ずっとずっとこの木には、ここを駆ける球児たちの青春を見守り続けてもらいたいと思う・・・。


春じゃない季節でも、ね、
ソメイヨシノは本当に愛しい木だ・・・。


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新チームが始動して一月。
そして迎える秋・・・。


「これがオレのスタートだ。
 もっと打ちたい!もっともっと野球が上手くなりたい!」と、息子は言った・・・。


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なあ、息子よ、それは少し違うぞと、心で僕は語る・・・。


君がまだ中学生で、
初めてグラウンドのあの木の下に立った日がスタートだったんだよ、と・・・。


でも、それを息子に直接言うのはやめた・・・。


5年後か10年後か、
それは必ず息子自身が気付く事なのだろうと信じているからだ・・・。


大人になった息子が自分の母校のグラウンドを訪れた時、
あの木を見上げて気付いてくれたらそれでイイのだ・・・。


スクールカラーの桜色の意味を、
野球部グラウンドのソメイヨシノの下で気付き、
なんて素晴らしい高校時代だったのだろうと涙すればイイのだ・・・。


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ソメイヨシノ・・・、
ソメイヨシノ・・・。


ソメイヨシノも嬉しかろう・・・。


その美しい花の色がスクールカラーなのだからな・・・。