子規に寄せて。

コロコロコロ・・・。
コロコロコロと、ボールが転がる・・・。
補り損ねたボールが転がる・・・。


待て待て待てと、それを追う・・・。
コロコロ転がるそれを追う・・・。


どこだどこだとボールを探す。
草を掻き分けボールを探す。


きっと、どんな人だって、
そんな経験は、ある・・・。


草を掻き分けつつ僕は、
野球という言葉を想う・・・。


よくぞ正岡子規は、
ベースボールを野球と訳してくれたものだ・・・。


そのままズバリ、
ベースボールを塁球なんて訳していたら、
こんなにもこの球技は、
人々の心を掴む事はなかったのではないかとさえ、僕は思う・・・。


掻き分ける草の香り、
そこに佇む白いボール。


野の球技、
野球・・・。


野球の楽しさとは、もしかしたら、
誰もがあの日に嗅いだ草の香り・・・。


少年の日に嗅いだ草の香り・・・。


コロコロコロと、野を行くボール。


いくつもの笑顔や、
沸き上がる歓声。


詩人はそれを、野球と訳した・・・。


否、詩人はそれを、野球と名付けた・・・。


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「言の葉を繁らせよ。」


正岡子規は、かく語りき。


数多の詩人が愛した野球を、
我もまた愛する者なり。


カキーン!