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E.SAWAMURA・・・。
生後7ヶ月の長女と妻を遺し、
フィリピン、レイテ沖にて戦死・・・。
享年、27歳・・・。
E.SAWAMURA・・・。
巨人軍の、初代エース・・・。
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とある日曜日に僕は、開運・なんでも鑑定団のテレビの再放送を見ていた・・・。
そこに、沢村栄治のお宝が出ていたんだ・・・。
1930年代後半のアメリカの街角で、
当時流行した外套を纏って笑っている若者の写真・・・。
セピア色の写真の中で笑っている若者が悲しい・・・。
悲しくて悲しくて僕は、胸が潰れそうになる・・・。
E.SAWAMURAってね、とても綺麗な英語の筆記体で写真に書かれていた・・・。
その笑顔の沢村の写真は、悲しいのだけれど美しかったよ・・・。
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生後7ヶ月で遺した愛娘・・・。
沢村は、何度その娘を抱いたのだろう?
抱いて、何度その娘に頬を寄せたのだろう?
同じく、娘を持つ父親の一人として僕は、
沢村を想い、想い、泣きたくなる・・・。
大きく育つ娘の姿を、ね、
沢村は見たかっただろうなと思う・・・。
戦争を憎もう・・・。
腹の底から戦争を憎もう・・・。
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カタン、と、我が家の郵便ポストが鳴る。
見ると、娘に宛てた成人式の着物のダイレクトメールであった・・・。
瑞々しく弾けるような笑顔の女の子が、ね、
綺麗な着物を着て写っているダイレクトメールであった・・・。
可愛いな、と、僕は思う・・・。
きっと僕の娘も、こんな着物が似合うだろうなと思う・・・。
僕は、シアワセであった・・・。
育つ愛娘の様子を僕は、ずっとずっと見ていられたのだから・・・。
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僅か27歳で逝った若者は、
生後7ヶ月の娘の未来を、ね、
どんなにか切なく考えていたのだろうかと考えると辛い・・・。
悲しくて悲しくて僕は、
言の葉を失う・・・。
沢村・・・。
沢村・・・。
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二度の召集を受け、
沢村は手榴弾を投げ続け、
その肩はもう、白球を投げられなかったのだと聞く・・・。
戦争を憎もう。
強く強く、腹の底から、
戦争を憎もう・・・。
沢村栄治。
生涯最後の野球のゲームは、ね、
投手ではなかった・・・。
代打として打席に立ち、
ファーストへのファールフライであった・・・。
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戦争を憎もう・・・。
巨人軍は、初代のエースを戦争で奪われたのだ・・・。
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沢村栄治。
生後7ヶ月の長女と妻を遺し、
フィリピン、レイテ沖にて戦死・・・。
享年、僅か27歳・・・。
無念であった事だろう・・・。