恩人に会う。

中学時代の同級生のお母さんがなさっている喫茶店で、僕の絵と作品を二週間ほど展示して頂いた・・・。


レトロ風ではなく、リアルにレトロな雰囲気の喫茶店で、そこにいるだけで心が落ち着き、何もかもが良い経験であった。


自分の作った物を、ね、
たくさんの人に見てもらえるのは本当にシアワセだった・・・。


そのお店で僕は偶然、38年ぶりに恩人に会った・・・。


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「まあ、あなたがあの子なの!」と、その人は言った。


そうです、僕がその子です!と、僕も驚きつつ言った。


おそらくは母と同年代のご婦人は、紛れもなく僕の恩人のその人・・・。


この喫茶店の常連さんなのだそうだ・・・。


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あれは僕が小学一年生の梅雨の頃の事。


台田団地近くのトモダチの家に遊びに行く途中で迷子になった・・・。
突然の大雨でびしょ濡れになり、右も左もわからないぐらいの辺りの暗さに僕は驚き泣いてしまった・・・。


今思えば、家から数十メートルの場所なのだけれど、
6歳になったばかりの僕にはそこは、遥か遠くの場所であったんだ・・・。


僕の泣き声に気付いた通りすがりのオバサンが声を掛けて下さり、お宅で保護して頂いた・・・。
びしょ濡れの服を脱ぎ、
お風呂に入れてもらい、
オバサンのお宅の子供さんの服を着てからようやく僕は平常心を取り戻したのだった・・・。


今日、喫茶店で会ったのは、そのオバサンだ・・・。
会えて嬉しかった・・・。


「立派になっちゃって!」って、言われて僕は少し照れた・・・。


「あなたは自分でお家の電話番号を言えたのよ。
それで私がお母さんに電話をして迎えに来てもらったの。」


おおっ、細かい状況までは記憶に無いので、な、
オバサンが語るその日の事が興味深い・・・。
6歳にして僕は、自宅の電話番号が言えたなんてな、
なかなか賢い子供だったのかな?


「ウチは娘ばかりだったから、あなたに娘の服を着せたのよ。」


おおっ、子供さんの服をお借りしたのは覚えていますが、娘さんの服で御座ったか・・・。
つまり、女装だったのね。


「あの頃の面影が残っているわ。」って、オバサンも嬉しそうに笑っていた。


恩人なるオバサンと握手。
柔らかくて、暖かな手だった・・・。


その節は本当にありがとうございました。


泣いている子供に声を掛けてくれる大人がいた。
良い時代だったのかもしれないね。


レトロで、
小さいけれど暖かい喫茶店・・・。
清瀬第2グラウンドの近くです。


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しかし、幼少期から僕ってヤツは、まったく人騒がせな男であったのは間違いない。


ちなみに、
半ズボンの尻ポケットにカンシャク玉を入れていて、
入れている事をうっかり忘れ、
滑り台を滑ってパ〜ン!事件は、
その雨の日から一月後の事だ・・・。