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「たこ焼き」・・・。
おいしい「たこ焼き」・・・。
でも、ちょっぴり哀しい「たこ焼き」もあるんだね・・・。
行列に並んでやっと手にした「たこ焼き」であろう。
舟形のパッケージを受け取ったばかりの男性が転んだ。
コロン!って、転んだ。
駐車場の車止めに躓いちゃったんだよ・・・。
ああ、かわいそうに・・・。
おそらく10分以上は並んでいたはずだ。
そんなに待ってようやく手にしたのであろう「たこ焼き」・・・。
舟形のパッケージが宙を舞う瞬間を僕ら周囲の人間は目撃した。
ソース、鰹ぶし、青ノリ、マヨネーズ・・・。
そして散らばる8つの「たこ焼き」・・・。
哀しそうな顔で横たわる男性・・・。
だが、人の世は捨てたモンじゃないな。
転倒した男性に駆け寄る僕ら行列仲間・・・。
彼を助け起こす我ら男性陣、
手際よく散らばった「たこ焼き」を片付ける女性陣・・・。
一度は口にしてみたいセリフがある。
そのセリフを口にするのは今かもしれないぞ・・・。
「この中にお医者さんはいませんか?」って、な・・・。
でも、奇跡的に男性はかすり傷ひとつ負っていない。
きっと、「たこ焼き」の神様が男性を救ったのだと思う・・・。
そして、感動的な出来事が起こった・・・。
屋台からお店の女の子が新しい「たこ焼き」を持って出てきた。
まるでマリア像のように優しい微笑を浮かべ、
そっと船形のパッケージを差し出したのだ・・・。
僕は、感動した・・・。
詩を感じた・・・。
この行列に並んだ事を誇りに思った・・・。
神よ、僕は祈り願う・・・。
もう人間を試すな・・・。
どうか人間を赦したまえと・・・。
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大きなスーパーマーケットの敷地内にある掘っ立て小屋なのだが、
そこは大人気のお店だ・・・。
いつもお客さんの列が絶えない・・・。
僕だって時々並ぶ。
その人気の理由は、ね、
味はもちろん優しさにあるのかもしれない・・・。
そこで買い、たとえクルマの中で食べるにしてもだな、
一応はテイクアウト用の包装にしてもらうのが良いだろう・・・。