敗れざる君たちへ2012

〜12月28日・記す〜

松井秀喜選手引退の報を聞き、愕然とす。

だが、インタビューに答える彼の言葉のひとつひとつは「誠」で、
己の道を「実」たらしめんと歩み続けた姿勢はまさに「誠実」であったのだから仕方あるまい。


松井秀喜は、「誠実」な野球人である。


かつて阿久悠さんが書いた一遍の詩、「敗れざる君たちへ」の中で謳われた、
悲しいほど爽やかな少年たちの一人のまま、彼は再びバットを静かに置いた。


そうだ。
五つ目の卑劣な敬遠を受けた後、
18歳だった彼は全ての悔しさや寂しさを優しく大きな心の中に呑み込み、
静かにバットを置いて1塁へと向かった。


そうなんだ。
僕ら多くの野球ファンはその瞬間、
ゲームに勝つ事と、野球に勝つ事の違いを教えられたのであった。
僅か18歳であった投手と打者の少年たちからな。


38歳にして再び静かにバットを置いた松井秀喜は、何処へ向かうのだろうか。


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敗れざる君たちへと謳われた少年は、
敗れざる君たちへと謳われた少年たちは、


敗れざる事の大切さをいくつもいくつも卑劣になった大人たちに見せつけ、
誰もがそっと、見事なまでにバットを静かに置く。


美しく見える。