訓
居酒屋にて、
概ね僕と同年代であろう少々くたびれたオッサンが、
部下とおぼしき若者2人に人生訓を垂れていた・・・。
カウンターの椅子に背広の上着を掛け、
ちょっぴり緩めたネクタイがいかにもアフター5っぽくてよろしい。
「いいか?人生ってのはな〜、
・・・人生ってのはな〜。」って、
しこたま呑んで酔ったオッサンは言うのだけれど、
その次の言葉がなかなか出ないので僕はイライラする・・・。
「うっぷ、ぐびっ、いいか?人生ってのはな〜、
だから、人生ってのはな〜。」
僕はたまたま同じカウンターに居合わせただけの者で恐縮だが、
いいからオッサンよ、その続きを聞かせて頂戴。
「さっきから言ってっけど・・・、ぐびっ、」
おいおい、言ってねえだろう。
「人生ってのはな〜、人生ってのはな〜、」
よしよし、いいぞ、早く聞かせてくれ、君の人生訓を・・・。
「人生ってのはな〜・・・、
・・・・・大変なんだ。」
僕は思わずカウンターの椅子からずっこけて落ちそうになった・・・。
でも、いいヤツなんじゃないか?
この少々くたびれた我が同世代のオッサンは。
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人生か・・・。
僕が若者に人生訓を垂れるとしたらどう語るかな・・・。
あらゆる場面に於いてそんな立場にいない自分に正直ホッとする。
人生訓なんて語るようになってしまったら、なあ、
そこから先へ行けなくなってしまうような気さえする。
このいいヤツであるオッサンが垂れたのは、人生訓じゃない。
要するに、「人生って大変なのよ。」って部下に愚痴っただけなりよ。
だからこのオッサンもまだまだ先へ行ける行ける。
なあがんばろうぜ、同世代たちよ・・・。
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人生とは、一夜限りのワンナイトショーなのだ。
矢のように走る時の狭間で踊る事なのだ。
ヒーロー、ヒーローになる時、Ah!それは今なのだ。
還暦を目前にして甲斐よしひろさんは今もなお甲斐よしひろさんなので格好良いのだ。
子供の頃、アンタも聴いてたろ?甲斐バンド・・・。
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ちょっと酔ったみたいだな。
え〜っと、タンを2本、カシラを1本、
身体のためにレバーを2本お願いします。
あと、梅サワーも・・・。
タンとカシラは塩で、
レバーはタレでお願いします。