HEARTS/1
「親父が死んだ年齢を自分が越えた時と、親父が死んだ時の自分の年齢を息子が越えた時、
オレは、ああ有り難いなって思ったんだよ。」
飲むとシマさんは、若くして亡くなった親父さんの話をする。
仲の良い清瀬ポニー30期の親父の中でも、たまたま僕らは同い年って気安さもあり、
飲んだり、メシを食いに行ったりする度に僕は聞かせてもらう・・・。
親父さんが生きる事の出来なかった年齢を自分が今生きていて、
親父さんが見る事の出来なかった年齢の息子の姿を見る事が出来ていて、
そこに有り難さとかシアワセをしっかり感じているのだからね、
なんて真っ直ぐで純粋な感性なのだろうかと僕は思うんだよ・・・。
そんな男が息子が給料で買った財布をもらったんだ。
その嬉しさの大きさは計り知れないだろう・・・。
本当に本当にシアワセそうな顔をしていたんだぜ・・・。
揺るがぬ有り難さを心の中に留め置いた男は強靭である。
僕は、そんな友人を誇りにする。
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日本中の野球の親父の仲間たちよ、
息子を授かった日の、あの嬉しさを覚えているか?
産声を聞いた日の、あの嬉しさを覚えているか?
初めて歩いた日の、初めて駆けた日の、
あの嬉しさを覚えているか?
あの嬉しさを忘れていないか?
初めてキャッチボールをした日の、
あの息子の笑顔を覚えているか?
あのはしゃぐ声を忘れていないか?
そうかそうか、覚えているんだね。
そうかそうか、忘れていないんだね。
きっと僕らは誰もがシアワセ者だ・・・。
日本中の野球の親父の仲間たちよ、
まだまだしぶとく生き抜いてやろうぜ・・・。
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