2013/春

勝戦とは思えぬほどの点差であった。
少年は、ノックアウト寸前のボクサーのような目をしてマウンド上にいた。
4連投、700を越える球数、
少年は、ただ気力のみでそこに立ち続けていたのだ。
勝戦とは思えぬほどの点差であった。


ひのき舞台ではなく、
血塗られたリングのような甲子園がそこにあった。


勝戦とは思えぬほどの点差であった。
少年は、心臓破りの坂道を駆け上るマラソンランナーのような表情をしていた。
棒球は、いともたやすく長打され、
少年は、勝利の女神の足元に跪くかのように静かに崩れ落ちた。


ひのき舞台ではなく、
血塗られたリングのような甲子園がそこにあった。


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テレビを消して僕は、外に出て深呼吸をした。
はらはらとソメイヨシノの花びらが舞う午後だった。


少年よ、夏、またここへおいでと、
足元に跪いた少年に勝利の女神は声を掛けてくれただろうか?