ともしび

「歌を唄いたいな、
青春時代に流行っていた うたごえ喫茶で唄ったような歌を。」と、
同級生のオフクロさんたちから頼まれて僕は、その伴奏を現在練習中だ。


同級生の一人のオフクロさんが、少しずつ心の輪郭がぼやけ始めていてね、
その心の輪郭が完全にぼやけてしまう前に、みんなで楽しく唄って思い出を作りたいとの事。


切ないな、本当に切ないな、
ホレホレ、僕なんかはさ、そんなオフクロさんたちに人一倍世話になってさ、頭が上がらないタイプのコドモだったろ?
そんな話を聞いてしまうと悲しくなって引き受けざるを得ん。


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むかしむかし、
ちょうど今頃の季節だったと記憶している。


小学校1年生だった僕らは、新座のあたごの「栗公園」で遊んでいて、
近くにあったタカギさんという駄菓子屋さんで、風船アイスを買って食べたんだよ。
そしたらお腹が痛くなっちゃってな、3人ほどだったのだが「栗公園」の草むらで用を足したんだな。
葉っぱでオシリを拭いたのだがパンツは汚れたのでその場に捨てたんだよ。
そしたら翌日、一緒にパンツを捨てた仲間の一人のBくんのお母さんがな、洗濯したパンツを届けてくれちゃってな、
それはそれはこっぴどく怒られたのであった。


息子がパンツ無しになっていることに気付いたBくんのお母さんがBくんを問い詰め、
夜、懐中電灯を手に「栗公園」へパンツ回収に行ったのだと言う。
昭和四十年代のコドモってな〜、パンツやシャツにも名前が書かれていたんだ。


な、頭が上がらないだろ?


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そんなオフクロさんが唄って楽しんでくれるならさ、
うたごえ喫茶の歌を覚えるしかあるまいだろう?


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カチューシャ、カリンカポーリシュカ・ポーレ