「長い間いろいろとありがとうね。」


若い頃から随分とお世話になっている型屋さんの社長から連絡があった。
来年の消費増税を機に、残念ながら廃業を決めたとの由。
僕の両親よりも高齢の社長御夫妻と、親戚の方々数名の小さな町工場ではあったが、
本当に頼りにしていた取引先であっただけに残念。


「きみの仕事を引き受けてくれる所を何軒か紹介するから心配しないでね。」


僕が作る最初の1個を 原型 と呼び、
その 原型 をこうした型屋さんに依頼して量産するのだけれど、
阿吽(あうん)の呼吸がバッチリ合っていたオヤジさんだったからな、まこと残念無念。


「ほしい道具や機械があったらあげるよ。」


ほしい道具や機械はもちろんたくさんあるが、いかんいかん、
小さな何かを記念に一つだけ頂こうと思う。


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こうした優れた技術を持った町工場が消えてしまう事は悲しくてならないよな。
機械の音と油の独特の匂いと、そこに働く人たちの尊い汗の輝きってさ、
本当は国の礎であるべきはずなのにな・・・。


ただ、この社長御夫妻にはお疲れ様と、
どうぞゆっくりこの先の日々をお過ごし下さいの言葉を贈りたい。
感謝の想いを込めて。


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夕焼けが綺麗だ。