点数ナイン

「点数無いんスよ〜、
点数無いんスよ〜。」と、
涙目でクネクネしながらな、
白バイ隊員さんに哀願していたトラックドライバーさんの声が耳に焼き付いて離れない・・・。


正義とは何か?
そう、正義とは何かと僕は深く考えるのだ。


確かにな、道交法なる法律を犯した罪は免れ得るものではない。
だが、職業ドライバーさんにとって免許証の点数が無くなっちゃうのは死活問題なりよ。
読んで字の如く、生きるか死ぬかの問題なワケよ。


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僕が万が一、白バイ隊員だったら、
たぶん、否、間違いなく許してあげちゃうだろうと思う。


想像してくれ・・・、
僕が白バイに乗ってパトロールをしている姿を・・・。


そんでもって違反をしたトラックを捕まえちゃったとする。
その運転手さんがさ、目に涙を浮かべてさ、
「点数無いんスよ〜、見逃して下さい。」ってさ、
クネクネしながら頼んできたらさ、断れないよ、絶対・・・。
じゃあ、今回だけ特別なって言っちゃうはずだ・・・。


だってそうだろ?
早朝から一生懸命手積みした荷物を載せて走っていたのかもしれない。
奥さんが作った愛妻弁当を食べる事を楽しみにしてるヤツかもしれない。
小学生の息子がいて、その子供は野球少年かもしれない。
休日には息子とキャッチボールなんかしてるイイ父親なのかもしれない。
そんな好漢の一日分の稼ぎが反則金で吹っ飛んでしまうんだぜ・・・。
捕まえてしまった白バイ隊員の僕のせいで・・・。


大黒柱の一日の稼ぎが吹っ飛んでしまったらな〜、
せっかくお弁当を作った奥さんは嘆くだろうし、
野球少年の息子は悲しむだろうし、
ましてや免停になっちゃってコイツが働けなくなったらな〜、
素敵な家族の生活を、白バイ隊員の僕が揺るがした事になっちまうんだぞ・・・。


悪いのは違反をしたコイツなのだけれど、
コイツの家族から笑顔を奪ってしまう権利は白バイ隊員の僕にあるのか?ってな、
おそらく僕は悩み、夜中に悪い寝汗を掻いてうなされて起きてしまうだろうに違いない・・・。


正義とは何だ?って苦悶しつつ悩み悩み、
白バイ隊員になってしまった事を後悔するだろう。
その苦悩をカミさんに打ち明けたりしてみろ、
「甘ったれるな!」って怒鳴られ、往復ビンタをされちゃうかもしれないんだぞ。


ああ、恐い恐い・・・。


僕は、白バイ隊員にならなくて良かった・・・。


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なあ、世のドライバー諸氏よ、
ハンドルを握る全ての人々よ、
違反はしないように気をつけましょうや・・・。


白バイ隊員さんを苦悩させても かわいそうだもん。


しまっていこうぜ!