古い大谷石の階段と、コンクリートの土台の隙間から、
このセミの幼虫はモゾモゾと這い出して来たのであった。

考えてみると不思議でしょ?
7年前、コンクリート大谷石の階段になんてな、セミが産卵するワケがない。
この場所から一番近くにある木までの距離は、およそ6メートルだ。
つまり、地中でセミの幼虫が活動する範囲は、最低でも半径6メートル以上って事。
小さな虫の大きな生命力に、僕は簡単に感嘆しちゃうね・・・。

羽化が迫り、界隈に柔らかな土の出口が無い事を知り、相当焦ったと思うよ、このセミ
大谷石とコンクリートの僅かな隙間は、まさしく一条の光明であったに違いない・・・。
「おおおっ、ラッキ〜!あそこから出られるぞ!」って、な。


朝の日差しの中、
透明だった羽根もこうしてワイルドなアブラゼミ本来の色になり、
あと少ししたら飛び立つんだ・・・。


生命とは、かくも逞しく尊い


人間のくせに生命を粗末にしているといったニュースが溢れる昨今、
小さなセミが飛び立つ前の姿に、僕はいろいろ思う・・・。