幾三 3

「またお邪魔します!」って言いながら、再び幾三は来た。
お邪魔しマウス!とか、ただいま!ではなく、
きちんと、「またお邪魔します。」って挨拶出来たのだからヤツも普通の人間なのだと思っていたところ、
あろうことかカミさんが、
「おかえり〜!洗濯物乾いているわよ!」と迎え入れたのでズッコケた。


しかも、
「洗ってほしいものがあったら洗濯機に入れておきなさい。」だと。


まあな、この愉快で可愛らしい野球小僧は、
野球の神様が僕ら夫婦に与えてくれた夏のプレゼントかもしれない。


本当に明るく楽しい男であった。
幾三と我が家の赤毛が、生涯を通じた友人であり続けますようにと願うばかりだ・・・。


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幾三よ、
今度は僕が北海道へ行くからよろしく頼む。
約束しよう、
ススキノあたりで良さげなスナックを見つけ、君に酒を飲ませてやろう。
君の名前でボトルを入れてやろう。
そのかわり、君は僕に札幌ラーメンを食わせてくれ。
付け麺じゃダメだぜ、普通の熱々の味噌ラーメンを所望する。


あ、その前に秋には赤毛が北海道へ行くらしい。
幾三よ、赤毛を泊めてやってくれ・・・。


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そうそう、
乾いた洗濯物の中にあった幾三の野球部のチームシャツには、
アルファベット表記で書かれた医大の名前の下に、
日本語で、こうプリントされていたよ・・・、


「野球中毒」って・・・。


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野球中毒・・・。


たぶん、その病は、
どんな名医だって治せないだろうな・・・。