仕事の用事で訪れた都内の老舗デパートで、
「にっぽんの伝統工芸展」なる催事が行われていた。
僕は、こうした催し物が好きなので、ワクワクしながら会場内を見て回った。


スゲエなって、日本の職人さんの技には素直に感動しちゃうね。
見事な職人芸が造り上げた品物の数々に目も心も奪われてしまう・・・。
スゴイんだよ、本当にスゴイんだ・・・。


中でも小紋染めのデザインと、その精緻な染め具合の素晴らしさに感嘆しちゃってボ〜ッとしていると、
ブースの中から、その染め職人さんが声を掛けて来て下さった。
申し訳ないと思いつつ、質問攻めをさせて頂く。
あのね、この小さく可愛らしい花のデザインを、僕は僕の仕事で活かしてみたいと考えたんだよ・・・。


63歳だと仰る染め職人のKさんは、
この道一筋30年なのだそうだ・・・。
スゴイですね、この道一筋30年なんて・・・と、僕はKさんを讃えた・・・。


一つの仕事を30年だなんて素晴らしい事だ。
まさしく尊敬に値するとアタイは思うね・・・。


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感動覚めやらぬまま帰宅し、僕は仕事机に向かう。
そして、
僕は この道何年になるだろうかと考えてみた・・・。
Kさんの足元にも及ばないが同じく職人として・・・。


あれ?
18歳でこの道に入った僕は現在48歳だろ?
48−18=30
あれれ?
僕だってこの道一筋30年になっているぞ!


30年だが、僕は少しもスゴクないぞ、何でだろ?


自分の事としてあらためて考えてみると、
この道一筋30年位じゃな、まだまだヒヨッコよ、ピヨピヨ。
自慢げに人に言う年月じゃないような気がする・・・。


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つまり、年月の長さじゃないんだ。
大切なのは・・・。


かもよ。


かもね。