教室の中に、人数より一つ減らした椅子を丸く並べて、ね、
その周囲に輪を作るんだよ、みんなで。
先生がピアノを弾いてさ、その音楽に合わせてグルグルと椅子の周りを歩くんだ。
そして、音楽が止まった瞬間に、ワッと椅子に座るんだ。
すると、一人だけ座れない人がいるでしょ?
その人が負け・・・。
そんなゲームを知ってる?


え?
知ってる?
椅子獲りゲームでしょ?ってか?
そんなに有名なゲームなのか!
そうだよ、椅子獲りゲームだ。


僕は、その椅子獲りゲームがすごく苦手でな、
子供の頃、一度も椅子が獲れた事が無い・・・。
本当だよ、本当なんだ。
いつも一番最初に座る椅子が無くなって負けていたんだ・・・。


列の前後にな、お尻の大きなオージリー・ヒップバーンの女子がいて、
ボヨヨヨ〜ンと跳ね飛ばされていたのではなく、
ただ反射神経が鈍かっただけだがな・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


現在、
世の中をグルリと見渡してみると、
社会をまるで椅子獲りゲームのようなものだと考えている人が多過ぎる気がする。


目の前の空いた椅子に、躊躇無く誰かを弾き飛ばしても座れる人が増えているでしょ?
そんな人がよく口にする言葉が 勝ち組 負け組 なんだ。
引き分け組 の僕は、そんな人たちを気の毒に思う・・・。


今は座れているけれど、
ほら、すぐに立たなくちゃ・・・。
立ってまた並ばなくちゃ・・・。
椅子を一つ減らした次のゲームが始まるよ・・・。


最後に残った一つの椅子になんか僕は座りたくねえな・・・。


椅子獲りゲームをしている場所からは、少々離れているけれど、
僕の座る小さな椅子は、柔らかくてあたたかい・・・。
僕は、椅子獲りゲームで勝ち続けている人よりもシアワセだ・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


新学期。
日焼けした笑顔で学校へ向かう子供たち。


全ての子供たちの未来がシアワセに包まれたものでありますように・・・。


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椅子獲りゲームの音楽って、
そう言えば「草競馬」じゃなかったっけ?


見事なまでの皮肉だな・・・。