水を満たしたドンブリに浮かべたティッシュペーパーが、
軽く刃をあてるだけでスパッ、スパッと、十字に切れるのだそうだ。
押忍!メスの話だよ。


息子から聞く様々な話が、とても興味深い。


現在のカリキュラムでは、こんな1年生でも実験やら実習やら小動物の解剖やら、
たくさんの経験をさせて頂けるのだからありがたい。
息子よ、まこと一日一日が医師という職人になるための修行なりよ。
オマエの座右の銘は「初志貫徹」にすればよいと父ちゃんは思う・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


子供が自分とは全く違う道に進むって事は、
親にとっても未知なるものを知るって事なのだと実感する。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


父ちゃんの息子なんだからさ、
オマエ、そこそこ手先は器用なはずだ。
職人の先輩としてのアドバイスなんだけれど、
いいか?
初歩の初歩の技術だけは、絶〜対に自己流で覚えるなよ。
基本に忠実であれ!だ。
基礎を自己流にアレンジして覚えちゃうとな、
ある一定のレベルから先には絶対に進めなくなっちゃうんだ・・・。


そのせいでオマエの父ちゃんは、職人としてこの程度だ。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


息子よ、
父ちゃんは小学校5年生の時、
フナの解剖が嫌で嫌でな〜、
その日、熱を出して学校を休んだレベルの男だ。


せっかく生きてるフナを、よう、
たかだか小学生の理科の授業で殺しなさんなって話だ。
大体、魚屋さんになったヤツすらいねえよ、同級生に・・・。


でも、
オマエの話すマウスの話は違う・・・。
もらったマウスの命を決して無駄にしてはならない・・・。
必ず将来、たくさんの命を救う者になるんだ・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


こんな話をしながら、
一昨日、僕らは古書店街を後にして帰途に着いたのであった。