タイム アフター タイム 2

告別式は午前9時からと、とても早い時間帯であり、
金曜日の朝の道の混み具合も想定して、僕は早くに家を出た。
戸田の葬祭場に着いたのは午前8時半過ぎだったが、
それでも既に火葬を終えた幾つかの葬列とロビー前ですれ違った。
午前9時でも随分早いと思うのだが、更に早い時間帯の式もあるんだな・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


今、とても火葬場は混んでいて、
叔父も亡くなってから通夜まで6日ほど待たされていた。


でもね、
その6日間、叔母は叔父が寂しい想いをしないようにと戸田の安置所へ毎日通い、
傍に居られたと喜んでいたのだから、
どのような状況も受け取り方によって人は、シアワセに変える事が出来るのだと思う。


病に苦しみ、痩せて逝った叔父だが、
目を閉じたその顔はとても安らかであった。
その傍に叔母は寄り添い、叔父と何を語らっていたのだろうか。
「シアワセでした。ありがとう。」
そうだな、間違いなく、そんな言葉を交わしただろうな・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


どちらが先に逝っても、なあ、
「シアワセでした。ありがとう。」って、
そう言葉を交わせる夫婦でなくちゃならないね・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


叔父の遺影は、
末娘の結婚式の、
バージンロードを腕を組んで歩いている時の笑顔であった。


獅子顔の叔父の、満面の笑み。


叔父さんよ、
あなたの人生は、シアワセに満ちたものでした・・・。


叔父さんよ、
精進落としの天ぷらを、さ、
てっきり僕はズワイガニの天ぷらだと思って食べたのだけれど、
口に入れたらそれは、赤いパプリカの天ぷらだったよ。
きっと、叔父さんの最後のイタズラだったんだね・・・。


叔父さんらしいと思いつつ、
赤いパプリカの天ぷらを食べながら僕は堪えていた涙が零れた。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


プラタナスの葉が舞う秋、
叔父は笑顔で月へ向かった。


寂しくなるなあ、寂しくなるなあ、
少しずつ、少しずつ・・・。