夜中の3時だ。
気が付くと夜勤中のカミさんからLINEでメッセージが来ていた。


患者さんがお亡くなりになり、
天国へ旅立つその方をお見送りして、
これから少し仮眠をしますとの由。


メッセージの文面を読み、これは相当こたえてるなと感じる。
返信をしたらすぐに既読になったので、
眠れてなんていないのだろうなと思う・・・。


ナースになって四半世紀、
逝ってしまう多くの生命を見送り続けているカミさんだが、
患者さんが亡くなる瞬間の悲しみや苦しみや胸の痛みには、慣れる事は無いと言う。


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僕は、母方の祖母が亡くなった時の病室の場面を思い出していた。


その場にいた看護婦さんが、とても綺麗に祖母の顔にお化粧をしてくれた。
唇に紅を差してくれて、祖母の顔が微笑んでいるように見えた途端、
僕は涙が溢れて止まらなくなったのだ。


「 ようやく楽になれましたね。 」と、看護婦さんは穏やかな表情で言ってくれたのだが、
その時いちばん泣きたかったのは、その看護婦さんではなかっただろうかと思うんだ。
カミさんのメッセージを読むと、それが分る・・・。


カミさんは今、休憩室で仮眠をとりながら泣いているんだろうな・・・。
誰にも見せちゃいけない涙を流しているんだろうな・・・。


最期を迎えるまで、家族や親族よりも傍にいてくれるのは、看護婦さんたちなのだからな・・・。


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あとで夜勤明けのカミさんを迎えに行ったら、うるさがられる程楽しい話をしてやろうと思う。


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まだ夜明けまでは遠い時間に、僕は本当の強さや優しさについて考えた。