50歳同窓会喜譚3

こんなオジサンにも初恋はあった。
本当だよ、本当なんだ。


ただカタチの上で 付き合う って事はそれ以前にもあったが、
心から好きになって 付き合った のは初めてであった。
高校時代、そんな初恋があったんだよ。


同窓会で僕は、初恋の人と話した。
32年ぶりに、たくさんの話が出来た。


とても痩せていて心配だが、
それでも相変わらずオシャレで、そして綺麗であった。
昔から僕は、美人が好きだったのだな〜ってつくづく感じた。


どんな32年だった?と尋ねると、
「 シアワセだったよ。 」と答えてくれた。
その言葉がとてもとても嬉しかったよ・・・。


フラれた立場の僕が言うのも恐縮ですが、
好きだった人がシアワセってね、それは最高に嬉しい事だよ・・・。
好きだった人がもしも不幸になっていたら悲しいでしょうが・・・。


誰かを好きになるってさ、そういう事だよ。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


わっはっは、
僕がフラれた原因は、
映画、「 時計仕掛けのオレンジ 」を二人で観に行ったからではなかった。


要するにだな、
勇気の足りない少年であったって事だ。


「 とても大切に想ってくれていた。 」
「 優しかった、優し過ぎた。 」と、
50歳になった彼女は50歳の僕に言ってくれた。
17歳の声で・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


ありがとう。


32年後になってしまったけれど、
僕が彼女に言い忘れていた言葉は、それだ。


ありがとう。


優し過ぎたのは僕ではなく、君の方だよ・・・。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


タイムマシーンに乗り、
フラれたあの日の、
寮の部屋で布団をかぶってシクシク泣いている17歳の僕の所へ行こう。


ガラガラッ(引き戸を開ける音)、
ドカドカッと青臭い部屋へ乱入。


おいっ、布団から出て来いっ、
このフラれ小僧っ!


「 げっ、オジサンは誰です? 」
僕か?
名乗るほどの者ではないが、33年後のオマエだっ!


これからオマエは約一週間、
悲しみのあまり食べ物が喉を通らなくなり、
しばらく下痢ピ〜な日々を過ごす事になるのだが、
彼女がシアワセでありますようにと願い続けろ!
この失恋から学べ!
そうすればオマエは男として、心の先っちょも皮が剥ける、
かもよ・・・。


って、な。