涼み虫

すまんね、
話は僕が銭湯でコーヒー牛乳を買って飲み、
タオルを腰に巻いて扇風機の風を浴びていた時点に遡る。


全裸で深く目を閉じたまま、
まるで即身仏のようになって扇風機の風を受けていたお爺さんが、
「んがが」と言って一度目を開いたんだ。
でもね、周囲を見渡す事さえせず、再び目を深く深く閉じた。


生きていてくれて良かった。
なんだか僕は本当にホッとした。


推定年齢80歳ほどのお爺さん。
痩せて、そして身体中に刻まれた深いシワは、まるで年輪のようだ。
ヨーダのようだ、なんちゃって、じゃなくって、
人間って、樹木に似ているのではないかと僕は思った。


「人間は考える葦」などではなく、
「人間は動く樹木」なのではあるまいか?


老人の身体に刻まれたシワは、
醜いものなどでは決してなく、
木々の年輪のようにもっと尊敬されてもいいはずだ・・・。


爺さんよ、爺さんよ、
僕はアナタに向かって手を合わせよう。
爺さんよ、爺さんよ、
でもね、大切なトコはタオルで隠そうよ。


な〜む〜。