まんじゅうこわくない。

息子の野球の新しい仲間の中に、落語が大好きな少年がいるそうだ・・・。
おおっ、と僕は身を乗り出し、いろいろ聞いてみたくなる・・・。


オリエンテーションで宿泊したホテルに於ける親睦行事の中で彼は、
お得意の落語を披露し、同級生たちから大喝采を浴びたのだそうだ・・・。


「すげえ上手いんだよ!ものすごく面白かったんだよ・・・。
 父さん、まんじゅうだかお茶だかが恐いって話知ってる?
 あのね、・・・くっくっく・・・わっはっは・・・、
 まんじゅうが恐いって言ってる人がいてね、・・・最後はお茶が・・・、わっはっは〜!」


一生懸命に僕に、息子は噺の内容を説明しようとするのだが、
自分で笑ってしまってダメだ・・・。
息子よ、ANAKよ、
落語のセンスはナッシングだな・・・。


その噺は、「まんじゅうこわい」だ・・・。
ちなみに、君の父さんはなあ、
お寿司とステーキ&焼肉と酒と、
キレイな女の人が恐い・・・。
覚えておいてくれ・・・。


でも、な、
楽しいだろ?落語って・・・。
楽しいだけじゃなくってね、
とっても人生勉強になるんだぜ・・・。


落語の事なら何だって聞いてくれよ、父さんにな・・・。
父さんが今までに収集した膨大な数の落語のカセットテープは将来、
父さんの遺産として君が相続してくれ・・・、頼んだぞ・・・。


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人生勉強になるんだよ・・・。
本当に落語って、ね・・・。


「芝浜」を聞けば、さ、どうして父さんと母さんの仲が良いかが解るぞい。
「掛取り」を聞けば、さ、市井の人々は皆助け合えるのだと解るぞい。
「子別れ」を聞けば、さ、家族の大切さが解るぞい。


息子よ、落語が好きなチームメートの彼は、
とっても素敵なヤツなんだと思うぜ・・・。


その彼に伝えてくれ・・・。
ウチの父ちゃんが現在、落語の弟子を募集中だってな・・・。


「師匠!」って呼ばれてみたいのさ・・・。


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え〜、毎度馬鹿馬鹿しい噺を一席・・・。


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野球部の仲間はもちろん、
それ以外の学校の仲間たちも同じ・・・。


新しいトモダチの名前を息子の口から聞くと僕は、
その度にね、とてもとても嬉しい気持ちになるんだ・・・。


心豊かな高校生活を過ごしておくれ・・・。


トモダチをどんどん増やしておくれ・・・。