宝物に込めた気持ち。

この間、ご近所でお世話になっていたご夫婦が引っ越された。小山の古い住宅地ならではのこと。すでに子供さん達は成人して独立されている。老後を考えると坂の多いこの地区は不安。部屋数も必要なくなり、生活の利便性から戸建を手放し、駅の近くへ移られた。
僕達家族が小山に住んで9年になる。小さい子供がいた我が家は本当にご近所の方々には良くして頂いた。そのご夫婦にも子供たちは可愛がってもらっていた。
ご主人は、暇があるとハヤトとキャッチボールをしてくれていた。
「これをハヤト君に上げてください。ずっと野球を続けさせてください。」
箱の中に往年の広島カープの選手の、直筆サインボール。僕が子供の頃の名選手ばかり。とてもじゃないが頂くわけにはいかない。ご遠慮申し上げると
「いいんです。どうしても彼に持っていてほしいんです。ただ、もしよろしかったら試合のある時に連絡もらえませんか。老後の楽しみに応援に行きたいんです。」

サインボールも価値あるものだが、それ以上にご主人の気持ちがうれしい。
「お父さん、オレは野球が好き。ずっと続ける。」
そうだね、うん。ありがとう。この道は君が自分の力で切り開く道だ。僕とは関係ない。ただ黙って君を見ていよう。