君に

まだあどけない顔をした、中学2年生の君・・・。
僕は君の顔を思い浮かべながら、今日の日記を書く。
まだ小さくて細い君の肩に、背負わされた悲しみについて。


知らなかったんだよ。ずっと応援していたのに・・・。
ごめんね。
とてもつらかっただろう・・・。
大切なお父さんが、この冬に亡くなったこと・・・。


つらかっただろう?
君はずっと、がんばっていたんだね・・・。


君の悲しみの大きさに想いを馳せる時、
僕は、君の小さな肩さえも抱きしめる言葉すら持っていなかった事に気付く。


僕は君を、君のチームを、ずっと応援していたのに・・・。


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  君はユニフォームを着て、自転車を漕ぐ・・・。
  坂道を登るんだ・・・。
  重たいペダル・・・。
  それでも君は自転車を漕ぐ・・・。


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君の悲しみは、あまりにも大きい・・・。
でもね、君は気付かなければならない・・・。


君の悲しみも大きいけれど、
君のお父さんの悲しみの方が、君の悲しみよりも大きかったって事に。


君のような「野球少年」を遺して、逝かざるを得なかった君のお父さんの悲しみ。


いいかい?悲しい時は・・・、
自分よりもね、もっと悲しい誰かのために祈ろう・・・。


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  君は登る。坂道を登り続ける・・・。
  重たいペダルを懸命に踏みしめながら・・・。
  

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君もお父さんと一緒に、野球の神様を探していたんだね。


強くなれ!
今でも強い君だけれど、もっともっと強くなれ!
お母さんと妹を、守らなければならない君だ・・・。
野球少年・・・。


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  重たいペダルを漕いで漕いで・・・、
  坂道を登りきった時・・・、
  君を撫でる風の音に耳を澄ましてほしい。
  それはお父さんの声だ・・・。


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グラウンドへ行こう・・・。


野球が君のお父さんなんだ・・・。


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土日、晴れるといいね。
いいかい?僕はスタンドで君を見てる。
君のお父さんと一緒に・・・。


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野球小僧よ!