野球少年を育てるのは野球だ。

晴れて良かった。
心から思う・・・。


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完全に治癒したとは言え、まだ少し不安だったので、今日は僕が車でグラウンドへ乗せて行く。
甘い?・・・そうだな、僕は、いわゆる野球オヤジじゃない・・・。
単なる甘い親父だ・・・。
英語で言うと、そうさ、スイートファーザーだ・・・。
ファの発音は、下唇を軽く噛み締めるんだぜ、ハニー・・・。
息子のうれしそうな顔を見ればね、正直うれしい・・・。
ああ、甘い親父だ。
何と言われても構わん・・・。
今日は、それでいいや・・・。


晴れて良かった。
心から思う・・・。


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硬球の恐さを、この時期に身をもって知る。
「それ見ろ!言わんこっちゃない。」
中学生が硬式野球に取り組む事について否定的な考えを持つ人たちからは、そんな言葉が聞こえそうだけれど。
でもね、僕は思う。
この時期に硬球の恐さを身をもって知る事が出来たのは、息子の大きな財産になる。


これまでの2年間で得た財産の大きさを僕は信じている。
硬球のスピード、硬球のリズム・・・。
硬球の温もり、硬球の鋭さ、恐さ・・・。


そして、本当の野球の楽しさ。


今もなお、こうして目を輝かせて野球に向かうハヤトの表情は、それを雄弁に物語る。


晴れて良かった。
今日は晴れて良かった。
心から思う・・・。


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「治ったこと、監督にはオレがグラウンドで言うよ。」
そうだな、それが正しい・・・。
監督もね、君の口から直接聞いた方がうれしいだろう・・・。


車の中でハヤトと交わす会話は、なんだか久しぶりみたいに感じた。


初めて2人で清瀬第2グラウンドへ行った日を思い出す。
もう2年以上も前のことなのにな、つい昨日の出来事みたいだ。


〜夢を見よう、夢を見よう、終わりのない夢を見よう〜
あの日も今も、僕が語る言葉は変わらない・・・。


晴れて良かった。
心から思う・・・。


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ア・オ・イ・ク・マ・・・。


アセラズ・オコラズ・イバラズ・クサラズ・マケズ・・・。


君を、そんな少年に育てたのはね、親父である僕なんかじゃない。


野球だ。


野球が君を育ててくれたんだ。


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晴れてよかった。
心から思う・・・。