マニアが来たりてメガホン叩く。
「高校野球のマニアです。
神奈川から来ました。」
スタンドへ昇る階段の脇っちょにある喫煙所で僕は、
そう語る男性に声を掛けられた・・・。
高校野球マニアを自認するこの男性は、息子たちの高校の野球に胸を打たれ、夏以降ずっと、この高校を追っているのだそうだ・・・。
「高校野球の正道と言うか、王道を感じます。」
有り難い事だ。
本当に有り難い事だと思い僕は、その男性と握手をした・・・。
今後ともよろしくお願い致します。
応援してやって下さい。
仕事でなかなか頭を下げない僕でも、ね、
この高校の野球部員たちのためならば、そう、
平身低頭する・・・。
一緒に応援して下さいと、
平にヒラヒラ頭を下げる・・・。
「一本杉球場も良き野球でした。
今日も良き野球が見られる事を楽しみにやって来ました。」
おおおおおっ、
まさしくファン・・・。
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神奈川から東京の東端まで、
しかも朝一番のゲームのために、
なおかつチケットを買い、
わざわざ我ら側のスタンドへお越し下さったあなたは、
もしかしたら野球の神様?
ご仁、しばし待たれよと僕は、サクラ色のメガホンを届けた・・・。
帰り際、返却して下さいネ!と、付け加えつつ・・・。
今日、
いつもよりもメガホンを叩く音が大きく聞こえたのは、ね、
その神奈川オジサンのおかげ・・・。
良き野球が克つ。
良き野球が克つ瞬間の感動に僕は今日も震えた・・・。
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この秋の大会を、ね、
形容する言葉は、「波乱」ではない・・・。
すべてそれは、理由あっての事だ・・・。
今日の神奈川オジサンみたいな高校野球のマニアレベルのファンの多くも、何かに気付き始めたのではないか?
僕も、その何かを予感して、
ワクワクする。
そうさ、ワクワクする・・・。
良き野球の背中を、
優しく包み、押し進めてくれるような、
良き野球の風が吹き始めた・・・。
それを実感している。