ナックルボウラー/おいなりさん

イトーヨーカドーの4階に車を停めて、
僕ら夫婦は階段で3階の売り場へと降りた。


階段から売り場へ進むと、ゲームのコーナーがある。
さすがに日曜日なので賑やかで、そして本当にちっちゃな子供たちは楽しそう。


ふと僕らが気付くと、
3歳ぐらいの男の子が、ね、
ゲーム機の前で股間を押さえて硬直していた。
「緊張しちゃっているんです。」って、
その男の子のお母さんは言っていた。


カミさんと、その男の子のお母さんは笑っていたのだけれど、
あのね、男はそれを笑えないのよ。
男ってヤツは皆、極限の緊張の前では、タマタマを握らずにいられないシャイな生き物なんだ。
それを理解してくれ。


たまたま3歳ぐらいだからタマタマ握りをこうして人に見られちゃっただけであって、
男は誰でも大勝負の前にはギュッと握って気合いを入れているものさ。
気合いスイッチとしてタマタマはぶら下がっていると言っても過言ではない。
あ、それはちょこっと過言か・・・。


大の男がそうして握り締める姿を人に見られる事はあってはならないのだが、
ちっちゃい男の子がそれをしている姿は許せるんじゃないか?


笑ったらいけないよ、
真剣勝負に臨む男の崇高なる行為を。


ギュギュッとね。


うんうん、坊主よ、
幼児から少年への階段を登り始めた君よ、


ギュギュッとね。


そう、ナックルボールの握り方で、ね。