来年の消費税増税を機に廃業を決めた墨田区の型屋さんの社長Kさん(70代男性)から僕は、
記念にとクランプ(万力)を貰った。
本当は旋盤の機械が欲しかったのだけれど、残念ながら僕の仕事部屋には置くスペースが無い。


頂いたクランプは使い込まれた古い物だが、きちんと手入れがされていて、
どれだけこの町工場で働いた人たちが誠実であったのかと解るんだよ。
モノ作りに誠実であり続けた数多の職人たちの魂を僕は、今あらためて引き継ごうと決めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「今までありがとうね。
工賃を値切らなかったのは君だけだよ。」と僕は言われた。
すごく嬉しく恥ずかしかった。
この町工場がこなす仕事の数を100とすると、
僕が依頼する仕事なんてな、0.1も無かったであろうに・・・。


消費増税は廃業のきっかけに過ぎず、
やはりメインの取引先からの相次ぐ加工賃の値下げ要求が最大の要因であったとの由。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あのう、
言っちゃ悪いけど、
でも、言わしてもらうけど、
大手のな、下請け業者さんに部品を発注する仕事をしているアナタよ、
あのな、同じセリフを街の魚屋さんに言ってみな。
「サンマが高すぎるので1尾50円にして下さい。
1尾50円にしてくれなければ今後、お宅で魚は買いません。」って。
気性の荒い魚屋さんのオジサンはアナタを追い返すだろうよ、
場合によっては塩を撒かれるかもしれないよ・・・。


東大阪の町工場が集って造った人工衛星が宇宙を飛び、
東京の町工場が集って造った潜水艇が深海8000メートルへ到達した時代に、な、
部品1個の単価を下げようとする大手は既に大手じゃなくなっちゃってるんじゃないかい?


でもな、たしかにサンマ1尾120円は高いと僕も思う。
せめて1尾98円なら毎日食べられるのにと残念無念です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


頂いたクランプ。
機械油で磨きこまれていてな、
それはとても美しいんだ・・・。