昆虫記

hayatonooyaji2005-10-19

アスファルトの上を、カマキリのお母さんが歩いていた。
彼女は臨月である。妊婦さんだ。ヒーヒーフー、ヒーヒーフー、ってね。
大きなお腹を引きずりながら歩いていた。
ちょっとマタニティ!待ったにてぃ!(待ちたまえ!の意味、相当無理のあるシャレだな・・・)
こんな所を歩いていたら大変だ。車に轢かれちゃうぞ!
僕は指でつまんで草むらに放した。カマで挟まれて痛かったけれど・・・。
彼女も必死だ。残された命の中で、最高の産卵場所を探して歩く。生命の目的。
ちなみに、現時点で彼女は未亡人である。旦那さんを食べちゃったのである。
旦那さんの身体は卵の栄養になったのだ。「それでもエエよう」って、旦那さんは言った。(か、どうかは不明)
「オレはダンナナンダぞ!喰わないでくれ!」って拒否しなかったのがエライ!
美しき究極の夫婦愛である。ジャイアンツ愛よりも偉大なのである。
彼女は「ごめんね、ごめんね、立派な卵を産むからね、堪忍ね」と言いながらダンナを食べたに違いない。
彼女はね、こんな所で車に轢かれて死んではならない。立派な卵を産まなくっちゃならない。しっかりと愛の結晶を残してほしい。


がんばれよ!僕の指はチクチク痛いけれど、笑顔で彼女を見送った。
今日の僕はファーブルだ。そう呼んでくれて構わない。ブルブル。
虫にも命のドラマあり。無視は出来ない。無死満塁だ。


カマキリのオス・・・押忍っ!
身につまされる話ではある・・・・。
人間に生まれてよかったニャ〜。


がんばっていきまっしょい
そうだ。がんばって生きまっしょい。
我々、人間も・・・・ね。


子供の頃の冬、僕のジャンパーのポケットには、カマキリの卵が入っていた。
すっかり忘れてそのまま仕舞われてしまった。
春になって小さなカマキリの赤ちゃんが無数、洋服タンスから出てきた。
お袋の悲鳴・・・・。


今なら言える、
ごめんなさい。