むかしむかし・・・。
それは、まだ僕が学生だった頃のこと・・・。
僕たちのクラスにね、キヨシくんと言う男の子がいました・・・。
人よりも少しだけ動作の遅い男の子でした・・・。


今ならね、からかいやすい彼のような子供は、
格好の「いじめ」の餌食にされてしまうのでしょうか・・・。


キヨシくんは、いい奴でした。
少なくともね、僕たちのクラス全員は、キヨシくんが大好きでした・・・。


むかしむかし・・・。
学校にはね、先生がいました・・・。


先生は僕たちに教えてくれました。
泣きながら教えてくれました。
キヨシくんの素晴らしさを教えてくれました。


「ええか?みんな!キヨっさんのような人間になってくれ!」


キヨシくんは、いつだってニコニコと笑っていました。
友達といると、いつだって笑っていました。
僕たちは皆、そんな彼が大好きでした。
彼の素晴らしさを教えてくれたのは先生でした。


「ええか?みんな!人間はな、誰だってシアワセになるために生まれてきたんや。
 シアワセにならなあかん。」


いつも先生は言っていました。


港湾での仕事をしながら、苦学をして先生になった人でした。
生徒を愛して信じていた先生でした・・・。
人間として、大切な事をたくさん教えてくれた先生でした。


ハヤトが生まれた年、
先生は定年退職をしました。


その年の正月、僕が先生に言われた言葉があります。


「おい!今はなぁ、つまらないんや。お前みたいなストレートの馬鹿がいないんや・・・。」


それはね、僕の勲章のような言葉だと思っています・・・。
先生は、教頭試験なんぞ眼中になく、僕らと一緒にいてくれました。
一番のストレートな馬鹿は、先生だったのかもしれません・・・。


でもね、だからこそ僕は言い続けるんだ・・・、
人間はね、誰だってシアワセになるために生まれてきたんだ・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


僕が子供だった頃。
学校には先生がいた・・・。
信じるに値する大人が、子供たちの近くにいたんだ・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


え?キヨっさん?
シアワセに生きてまんがな。でんがな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ね、シアワセに生きていこう。


大丈夫。僕が近くにいるよ・・・。
大丈夫!平気だよ。