そうじKING。
ンゴォーッ!
ンゴォーッ!
ゴメンね・ゴメンね〜っと、
うるさくってゴメンね〜っと・・・。
ンゴォーッ!
ンゴォーッ!
僕は今、四つん這いになって掃除機をかけているところ・・・。
今年初めての真夏日の昼下がり、ただでさえ暑苦しい車の中で・・・。
ンゴォーッ!
ンゴォーッ!
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僕の腹の中同様、
僕の車の中も汚い・・・。
何しろ僕は、ね、年頃の娘を持つ身だ・・・。
娘にしてみれば、さ、父親の車の中が汚かったら嫌だろうって思うんだ・・・。
女子高生というもの、ただでさえ父親を汚らしいと感じるらしい・・・。
(うむ、僕の場合はな、本当に汚かったりしなくもない・・・。)
そうじ・そうじ、
とにかく掃除・・・。
僕は今、そうじKING!
ンゴォーッ!
ンゴォーッ!
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僕の車は、8人乗りのワゴン車だ・・・。
イスをぜ〜んぶ持ち上げ、そして掃除機をかける・・・。
掃除機のノズルをズルズル。
すみからすみまでズズズイっと吸い吸い。
なんてったって僕は今、そうじKING!
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買ってから2年半、
正直に言うと、
車の中を掃除するのは初めてだ・・・。
マットの上、マットの下、
乾いた土がゴロゴロリン・・・。
子供たちの野球と一緒にいた車だからな・・・。
乾いた土がゴロゴロリン・・・。
思い出の土がいっぱい・・・。
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清瀬第2グラウンドの土・・・。
内山グラウンドの土・・・。
江戸川グラウンドの土・・・。
江東グラウンドの土・・・。
出会いの森グラウンドの土・・・。
子供たちが懸命に駆けたグラウンドの土・・・。
少しずつみんなの靴に付いていて、
車の中に残っていた土・・・。
なんだか尊くて愛しい土・・・。
思い出がいっぱいつまった土・・・。
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しばし僕は感傷にふける・・・。
土よ、愛惜しき土たちよ!
だが、僕は今、そうじKING・・・。
ンガゴ・ンガゴと吸ってしまう・・・。
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そしていよいよ、
高校の野球部の父母会の先輩から連絡あり・・・。
1年生の親父たちにも、ね、車出しの依頼だ・・・。
僕は、うれしい・・・。
ブラスバンドの楽器を球場まで運搬する役割だ・・・。
バンバン行こうと思う・・・。
ブラバン・ババババ・ババババ〜ン!なり。
愛車よ!
行こうぜ!ふたたびカキーン!の元へ!
いざ!
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僕は今、そうじKING!
綺麗好きな親父・・・。