ズッシリ重い僕の財布。

閉門時刻が迫る球場を後にして、
僕ら夫婦が帰途に着こうと歩いていると、
「父さん!お〜いっ、父さん!」
息子がすごい形相で走って来た・・・。


「父さん!財布を落としたろ?
 H先輩が拾ってくれたんだ!拾ってオレに届けてくれたんだ・・・。
 H先輩に御礼を言ってくれ!」


おおおっ、
なんてありがたい事だ!
ワンダホー!
心がビューリホー!さすが高校球児な先輩!


僕は、Hくんに御礼を言った・・・。
助かりました・・・。
ありがとうございましたって・・・。


あのね、オジサンね、
良からぬ事情があって今月お小遣いが無くなっちゃっていて、
カミさんからツナギ融資を受けて過ごしている状況なのよ。
君は命の恩人と呼ぶに等しい・・・。


オジサンの財布ってばさ、
ズッシリ重かったでしょ?
でもね、それ、小銭の重さなんだよ・・・。


本来なら、一割を差し上げるのが人の道だと思う・・・。
でもね、現状のオジサンの財布の中の金額の一割ですと、
あまりにも君に対して失礼です・・・。


Hくんはニコっと微笑み、
「いいです、いいです。」って言ってくれた・・・。


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涙が出そうなほど感動した・・・。
いろんな意味で、ね。


これからな、Hくんと仲良くなろう・・・。


熱烈応援させてもらおう・・・。


本当に、ね、イイ笑顔だったんだよ、H先輩・・・。


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「まったく!
 しっかりしなさいよ!」


カミさんが言う・・・。


「きちんとした御礼をしなくちゃ・・・。」


僕も、カミさんの意見に賛成・・・。

これ、ガネーシャ・・・。
ボク、カネネーシャ・・・。