「ルーキーズ」くんと「ひゃくはち」くん。

とある駅のロータリーでのこと・・・。


髪を茶色く染めて伸ばし、学生ズボンの半ケツを下した格好の高校男子が2名、
そして、な、そんな彼らとベストマッチな格好をしたアゲアゲなる女子高生が2名、
合計4名でな、ウジャジャとコンビニの前でくつろいでいらした・・・。


見て見てっ、恐いよ、不良です。
まさしく不良イグレシアスだと言えるだろう・・・。
♪ナタリ〜♪だ・・・。
大ヒット映画の「ルーキーズ」では、ね、
こんな人たちが野球をするのだけれど、
実物を目の当たりにすりゃあな、これじゃダメです・・・。
あの映画もドラマも漫画も、な、
ぜ〜んぶフィクションです・・・。


僕は、目を合わさぬ・・・。
そんな彼らと、ね、目を合わせぬ・・・。
え?からまれたら恐いから?
いえいえそれは違いまする・・・。
からまれたらね、こんな奴らはタコ殴りにしてやります・・・。


彼らと目を合わせぬ理由は、
彼らの目が悲しいからだ・・・。


寂しくなってしまうからだ・・・。


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もしかしたらね、
彼らだって野球が好きなのかもしれないんだ・・・。


ちっちゃかった頃、
野球をしていた子かもしれないんだ・・・。


「チィ〜ッス!野球っスか?
 シブイっスよね!イチロー・・・。」
なんてね、言う奴かもしれないんだ・・・。


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映画、「ルーキーズ」が大流行した理由が解る・・・。


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悲しくて寂しい少年が多い・・・。


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話を元の、そう、駅前ロータリーに戻そう・・・。
ウジャウジャとタムロする彼らの前を、
一人の高校球児が通り過ぎた・・・。


5厘の坊主頭・・・。
野球部のバッグを肩から下げて、
真っ白なYシャツとグレーのズボン、
黒く磨いた革靴・・・。
真っ直ぐな瞳・・・。
悲しくも寂しくもない瞳・・・。


強豪校の野球部員にしては小柄なのだけれど、
鍛えぬいた腕が眩しい少年だった・・・。


茶色い髪の「ルーキーズ」たちには目もくれず、
この「ひゃくはち」くんは、歩く・・・。
改札に向かって・・・。
グラウンドに向かって・・・。


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僕は、否定しない・・・。
誰をも、否定しない・・・。


否定しないし、否定もされたくない・・・。


みんなみんな、ね、
今のままでいいんだもんな・・・。


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ただ、少年たちやい、


あのね、
悲しい目や、寂しい目にだけは、ね、
ならないでおくれよ・・・。


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君は、どこにいる?


グラウンドかい?