95人の野球少年が来て、
その後に足立ナンバーのワゴン車が来て、
助手席に少年が乗っていたので集結した中学野球小僧の数は、96人であった。


最上級生になる息子たちが班長さんになり、
班ごとに分かれた96人の少年たちがグラウンドを駆けた・・・。


高校の野球部グラウンドを見守る大きなあの木は、
その様子を嬉しそうに眺めていた・・・。


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96人の野球少年には、ね、
それぞれひとつずつの野球の物語がある。


96の野球の物語の主人公たちが今、僕の目の前を駆けている。


深呼吸をすると、灼熱の風さえ優しい・・・。


お〜い、君よ、
まだまだ小さな君も、ずいぶんと大きな君も、
覚えているかい?


最初にお父さんとしたキャッチボールの楽しさや、
生まれて初めて野球のユニホームを着た日の嬉しい気持ちを、ね、
覚えているかい?


そうかそうか、しっかりと覚えているんだね。


だから96人の君らは、
こんなにもいい表情で、さ、
グラウンドを駆けているんだね・・・。


ずっとずっと忘れないでね、
そして、きちんと自分の野球の物語の主人公でいてね・・・。


このグラウンドを見守る大きな木の下で、
一生つき合える仲間を得ておくれ・・・。


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仲間を得ておくれ・・・。


仲間を得て、
力を合わせる事の大切さを学んでおくれ・・・。


高校時代を、ね、
野球のためにあきらめるのではなく、
野球からまだまだたくさんの宝物をもらっておくれ・・・。


将来、
人生を豊かにしておくれ。
シアワセな日々を生きられる稽古をしておくれ・・・。


高校野球で。
高校野球で・・・。


勝てなくてもいいんだ。
ただ、克ってほしい。


96の野球の物語の、
素晴らしい佳境を僕は願う・・・。